アスベストは耐熱性、断熱性、耐久性があり、加工がしやすく、かつ低コストといった特性から「奇跡の素材」として重宝され、1980年代まで広く使用されてきました。しかし、その後、深刻な健康被害をもたらすリスクがあることが明らかになり、現在では法規制が進められています。特に建物に使用された吹付けアスベストやアスベスト含有吹付けロックウールは、飛散しやすく、吸入による健康リスクが非常に高いため、工事前の事前調査や安全な除去が必要不可欠です。
これらの対応を支援するため、国や自治体は補助金制度(住宅・建築物アスベスト改修事業)を創設しています。本記事では、補助金の対象、具体的な活用方法、調査や除去のプロセスについて解説します。
補助金の対象は吹付けアスベストとアスベスト含有吹付けロックウール
アスベスト関連の補助金はすべての建材を対象としているわけではありません。現時点で補助対象となるアスベスト(石綿)は、吹付けアスベストとアスベスト含有吹付けロックウールのみに限定されています。
吹付けアスベストとは?
出典:国土交通省「目で見るアスベスト建材」
吹付けアスベストは、建物の防火性や断熱性を向上させるために使用されていた建材です。施工時にアスベストを材料を直接吹き付けてるため、老朽化や建物の解体・改修作業などの際に微細な繊維が飛散しやすくなるため、吸入による健康被害のリスクが非常に高いことが特徴です。
アスベスト含有吹付けロックウールとは?
出典:国土交通省「目で見るアスベスト建材」
アスベスト含有吹付けロックウールは、ロックウール(鉱物繊維)にアスベストが一定の割合で混合されたものです。吹付けアスベストと同様に、防火や断熱を目的に使用された建材で、吸入による健康被害のリスクが非常に高いことが特徴です。
これらの建材は、調査や除去を怠ると健康被害を引き起こす可能性が高いため、補助金制度を活用して適切に対応することが推奨されます。
建物の耐用年数と解体時期
これらの吹付け建材は、主に1970年代以前に建設された建物で広く使用されています。1970年代に建設された建物の解体時期は、建物の構造、使用目的、メンテナンスの状況などにより異なりますが、一般的な耐用年数に基づいて、おおよその時期を推測できます。下表を参照ください。
建物の構造 | 一般的な耐用年数 | 解体時期の目安 |
木造建築 | 30〜50年 | 2000〜2020年頃 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 50〜60年 | 2020〜2030年頃 |
鉄骨造(S造) | 40〜50年 | 2010〜2020年頃 |
吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウールが広く使われた建物の解体時期は2020〜2030年頃、つまり現在がピークであることがわかります。
アスベスト調査の補助金
アスベスト調査に関する補助金制度は、建築物所有者の経済的負担を軽減し、アスベストの適切な管理を促進することを目的としています。
対象となる建築物
補助金の対象となる建築物は、以下の素材が使用されている可能性がある住宅や建築物です。
- 吹付けアスベスト
- アスベスト含有吹付けロックウール
- 吹付けバーミキュライト
- 吹付けパーライト
バーミキュライトとパーライトが調査対象となる理由
バーミキュライトとパーライトが調査対象に含まれる主な理由は以下の通りです。
- 不純物としてのアスベスト含有: これらの天然鉱物由来の材料には、不純物としてアスベストが含まれている可能性があります。
- 意図的なアスベスト添加: 吹付け材の剥落防止のため、繋ぎ材としてアスベストが意図的に添加されているケースがあります。
- 健康影響への配慮: アスベストが含まれている場合、経年劣化や振動等によって粉じんが発生する恐れがあります。
- 法令遵守: 大気汚染防止法等により、建築物の解体時にはアスベストの使用状況等に関する事前調査が義務付けられています。
- 分析の必要性: 含有量が微量の可能性があるため、適切な分析方法を用いた慎重な調査が必要です。
これらの理由により、バーミキュライトとパーライトも調査対象に含めることで、建築物内のアスベスト含有材料を網羅的に把握し、適切な管理や除去対策を講じることが可能となります。
補助金額
多くの自治体では、アスベスト調査の補助金額は以下のように設定されています。補助額は自治体によって違なりますので、詳細は各自治体に詳細をお調べください。
- 1棟あたり上限25万円
- 調査費用の1/2相当額
- 戸建住宅の場合:上限10万円
- 集合住宅等の場合:上限20万円
申請手続き
補助金の申請手続きは以下の流れで行います。
- 最寄りの地方公共団体に補助金制度の有無を確認
- 補助金交付申請書の提出
- 交付決定通知の受領
- 調査業者との契約締結
- アスベスト調査の実施
- 完了実績報告書の提出
- 補助金の受領
アスベスト除去工事の補助金
アスベスト除去工事に関する補助金制度は、アスベストの適切な除去を促進し、健康被害のリスクを低減することを目的としています。
対象となる建築物
補助金の対象となる建築物は、以下の素材が使用されている住宅や建築物です。
- 吹付けアスベスト
- アスベスト含有吹付けロックウール(アスベスト含有率が0.1%を超えるもの)
補助金額
アスベスト除去工事の補助金額は、自治体によって異なりますが、一般的に以下のような基準で設定されています。
- 工事費用の3分の2
- 上限額は100万円から400万円程度
- 国の補助率:地方公共団体の補助額の1/2以内(かつ全体の1/3以内)
補助金申請の流れ
1.事前相談:自治体の窓口に補助金の申請について相談
2.補助金交付申請書の提出
3.交付決定通知の受領
4.要件を満たす除去事業者の選定と工事請負契約の締結
5.アスベスト事前調査の実施(必要に応じて)
6.除去・解体工事の実施(資格を持つ作業主任者の監督下で)
7.作業記録の作成
8.完了実績報告書の提出
9.補助金確定通知書の受領
10.補助金交付請求
11.助成金の受領
注意点
・自治体によって補助金の条件や金額が異なります。
・多くの場合、交付決定前に工事や契約を行うと補助対象外となります。
・申請期限や予算には制限があるため、早めの相談・申請が推奨されます。
・一部の自治体では、調査のみが補助対象となっている場合もあります。
・除去工事を行う事業者は、法定の要件を満たしていることを確認してください。
・作業員の資格や健康診断の実施状況を確認することが重要です。
・除去作業後の確認や記録の保存など、法定の手続きを確実に行ってください。
まとめ:アスベスト対策と補助金活用のポイント
アスベスト調査・除去工事の補助金制度は、建物所有者の経済的負担を軽減し、アスベスト対策を促進する重要な仕組みです。以下に、補助金活用のポイントをまとめます。
- 早期対応の重要性
- 1970年代以前の建築物は、アスベスト含有の可能性が高いため、早めの調査・対策が重要です。
- 現在は解体のピーク時期にあたるため、迅速な対応が求められます。
- 自治体ごとの制度確認
- 補助金の内容は自治体によって大きく異なります。
- お住まいの地域の最新情報を必ず確認しましょう。
- 適切な事業者の選択
- アスベスト除去は専門性の高い作業です。
- 法定要件を満たし、経験豊富な事業者を選びましょう。
- 申請手続きの注意点
- 多くの場合、工事着手前の申請が必要です。
- 必要書類や申請期限を事前に確認しましょう。
アスベスト対策は、居住者や利用者の健康を守るだけでなく、建物の資産価値の維持にもつながります。補助金制度を賢く活用し、安全で快適な環境づくりに取り組みましょう。ご不明点がある場合は、アスベスト調査専門「アスベストバスターズ」に、どうぞお気軽にご相談ください。