アスベスト調査に必要な資格一覧|建築物・工作物の事前調査は誰ができるのか(2026年1月の工作物義務化も合わせて解説)

目次

はじめに:アスベスト事前調査の重要性と資格の必要性

アスベスト(石綿)はかつて建材に広く使われましたが、健康被害の恐れから現在では厳しく規制されています。建築物や工作物を解体・改修する前には、アスベストの事前調査を行い含有の有無を確認することが法律で義務付けられています。

2023年10月以降、事前調査は有資格者が実施しなければならないと定められ、調査を行う人には専門の資格が必要となりました。さらに工作物に対する資格が新たに設定され、2026年1月以降は工作物向けの事前調査専門資格が必要になります。

一般の建設・不動産担当者や解体業者の方々にとっても、適切な資格を理解し対応することが重要です。本記事では、アスベスト調査に関連する主な資格の概要や取得方法、対象範囲について分かりやすく解説します。

アスベスト事前調査とは?義務化された背景

まずはアスベスト事前調査の基本を押さえましょう。事前調査とは、建物や工作物の解体・リフォーム工事に着手する前に、その構造物にアスベスト含有建材が使われているかを確認する調査です。アスベスト粉じんを吸い込むと肺がんや中皮腫など重大な健康被害を引き起こすため、全ての工事で規模に関わらず事前調査が必須です。

近年の法改正で事前調査の徹底が図られており、特に2023年10月1日から建築物の事前調査は有資格者による実施が義務化されました。さらに2026年1月1日からは工作物の事前調査も有資格者による調査が義務化される予定です。これらの改正により、調査を担当する者は所定の講習を修了し資格を取得していなければなりません。具体的にどのような資格が必要となるのでしょうか。

アスベスト調査に必要な主な資格一覧

アスベスト調査や関連作業に関わる代表的な資格を整理します。建築物と工作物の調査それぞれに専門資格があり、また実際の除去作業には別途資格が必要です。ここでは「建築物石綿含有建材調査者」、「工作物石綿事前調査者」、「石綿作業主任者」の3つを中心に、それぞれの概要・必要性・取得方法・担当範囲を解説します。

建築物石綿含有建材調査者(建築物の事前調査専門資格)

概要と必要性

建築物石綿含有建材調査者は、ビルや住宅など建築物に使用されている建材のアスベスト含有の有無を調査できる国家資格です。2023年10月以降、建築物の解体や改修前のアスベスト調査はこの資格保有者が行うことが法律で義務化されました。つまり建築物に関する事前調査の現場では必須の資格です。一般の工務店・建設会社の方でも、解体前調査を自社で行う場合はこの資格取得が強く求められます。

取得方法

厚生労働省の登録講習機関が実施する「建築物石綿含有建材調査者講習」(通常2日程度の講習と修了試験)を受講・修了することで資格を取得できます。講習ではアスベストに関する基礎知識や図面の読み方、現場調査の方法、報告書作成などを学び、最後に筆記試験等の修了考査に合格すると修了証が交付されます。受講するには所定の受講要件(例:建築施工管理や設計など建築分野での一定の実務経験)が必要ですが、実務経験がない場合でも「石綿作業主任者」を先に取得すれば受講資格を満たすことが可能です。

担当できる調査範囲

この資格を取得すれば、建築物全般(戸建住宅からオフィスビルまで)のアスベスト含有建材の有無について事前調査を行い、その結果を報告書としてまとめることができます。また資格区分として「一般建築物」「特定建築物」「一戸建て等」といった区別がありますが(講習内容や試験に一部違いあり)、一般建築物石綿含有建材調査者であれば全ての建築物を対象に調査可能です。特定建築物向けは試験科目が増える高度区分ですが、現行制度では一般区分と調査できる範囲に差はありません(将来的に区分ごとに役割が分かれる可能性があります)。

工作物石綿事前調査者(工作物向けの事前調査専門資格)

概要と必要性

工作物石綿事前調査者は、ビルなどの建物以外の構造物――いわゆる「工作物」におけるアスベスト使用の有無を調査するための新設資格です。工作物とは工場プラント設備や煙突、ボイラー、配管、橋梁、高架、水門、トンネル内部構造など建築基準法上の「建築物」には該当しない各種構造物を指します。老朽化した工作物にも過去にアスベスト材料が使われている可能性があり、安全な解体のために専門調査が必要です。2026年1月以降、こうした工作物の解体・改修時は工作物石綿事前調査者による事前調査が義務化されるため、プラント設備の管理者や解体業者には今後必須の資格となります。

取得方法

建築物向けと同様に、登録講習機関による「工作物石綿事前調査者講習」(講義・修了試験)を受講し合格することで資格を得られます。講習時間はおよそ2日間で、学科講習と筆記試験が課されます。受講には18歳以上であることに加え、一定の受講要件が設けられています。代表的な要件は石綿作業主任者技能講習を修了していることで、他にもプラントの管理・工事等の実務経験や関連資格保有などが求められます(詳細な要件は講習案内で確認が必要です)。これら要件を満たし講習修了試験に合格すると、工作物石綿事前調査者として認定されます。

担当できる調査範囲

この資格を持つことで、工作物全般(法律で「特定工作物」と定義される構造物群)のアスベスト事前調査を行うことができます。具体的には、工場やインフラ施設に設置された配管・ボイラー・変電設備・煙突・焼却炉から、高架橋・トンネル内装・プラットホーム上家・遮音壁など多岐にわたる特定工作物が対象です。ただし一部例外もあり、用途によっては対象外となる設備もあります。工作物石綿事前調査者はこうした幅広い構造物について専門知識を駆使し、石綿含有の有無を正しく調査・判定する役割を担います。建築物石綿含有建材調査者との違いは、対象が建築物か工作物かという点であり、それぞれ調査できる範囲が異なる点に注意しましょう。

石綿作業主任者(アスベスト除去作業の現場責任者)

概要と必要性

石綿作業主任者は、実際にアスベスト含有建材の除去作業を行う現場で作業を指揮監督するための国家資格です(労働安全衛生法に基づく技能講習修了者)。建築物や工作物の解体現場でアスベスト除去等の作業をする際には、必ず1名以上の石綿作業主任者を選任することが義務付けられており、 作業手順の管理や安全措置の徹底を図ります。この資格者がいないと法令違反となるため、除去工事に関わる解体業者には欠かせない存在です。

取得方法

各地の講習機関が実施する「石綿作業主任者技能講習」(2日間程度の講習と修了考査)を受講し、修了試験に合格すると取得できます。受講資格に特別な実務経験は要りませんので、比較的取得しやすい資格です。講習では石綿作業の危険防止措置や保護具、作業基準など実務に直結した内容を学びます。合格者には修了証が交付され、晴れて作業主任者として現場に就くことができます。多くの企業では、現場代理人や職長クラスの社員にこの資格を取らせ、いざという時に配置できるようにしています。

担当できる範囲と役割

石綿作業主任者はアスベスト除去等の作業現場に限り業務を担当します。具体的には、作業開始前の作業計画の確認、作業手順の指示、作業員が適切な保護具を着用しているかのチェック、作業中の粉じん飛散防止措置の監督、関係者以外の立ち入り禁止措置の徹底など、安全に除去作業を遂行するための監督者です。なお石綿作業主任者は事前調査自体を行う資格ではありませんが、この資格を持っていることで石綿含有建材調査者講習の受講要件を満たすなど、調査者資格取得のステップとして役立つ面もあります。

その他の関連資格・講習

上記の主要資格以外にも、アスベストに関する知識・技能を証明する資格や講習があります。

例えば「石綿取扱作業従事者特別教育」は、実際に石綿等の取扱作業に従事する作業員全員に義務付けられた教育で、資格というより法定教育ですが現場では必須です。

また民間資格の「アスベスト診断士」は、法定資格ではないもののアスベスト労災防止協会が認定する資格で、建築物のアスベスト含有建材劣化診断などを行う民間有資格者です。本記事のテーマである事前調査を行うには国家資格である調査者講習修了が必要であり、診断士資格のみでは法律上の「有資格者」とはみなされない点に注意してください。

必要に応じ、作業環境測定士(石綿粉じんの濃度測定を行う国家資格)なども関連してきますが、こちらは主に除去作業時の環境測定が役割です。まずは事前調査者と作業主任者の主要資格を押さえておけば十分でしょう。

建築物・工作物ごとに必要な資格早見表

調査対象が建築物か工作物か、そして実際に除去作業を行うかによって、必要となる資格が異なります。以下に調査・作業内容別に必要な資格を整理します。

  • 建築物の事前調査建築物石綿含有建材調査者(2023年10月より義務)
  • 工作物の事前調査工作物石綿事前調査者(2026年1月より義務)
  • アスベスト除去作業(解体現場) … 石綿作業主任者(作業現場ごとに選任義務)+ 作業従事者全員の特別教育修了

上記のように、解体や改修工事の事前調査段階では建物か設備かで必要資格が変わり、実際の除去フェーズでは別途作業主任者が必要となります。

よくある質問(FAQ)

最後に、アスベスト調査の資格に関して寄せられがちな疑問にQ&A形式でお答えします。

  • Q: 未経験者でも建築物石綿含有建材調査者の資格を取得できますか?
    A: はい、可能です。ただし講習受講には一定の条件があります。建築関係の実務経験がない場合でも、先に石綿作業主任者の資格を取得すれば調査者講習の受講資格を得られます。そのため未経験の方は、まず石綿作業主任者技能講習を修了してから調査者講習に臨むルートがおすすめです。
  • Q: 石綿作業主任者を持っていれば事前調査もできるのでしょうか?
    A: いいえ、事前調査を法律上実施できるのは調査者講習修了者のみです。石綿作業主任者は除去作業の安全管理者として必要な資格であり、調査そのものを単独で任せられる資格ではありません。ただし前述のとおり、石綿作業主任者を持っていれば調査者講習の受講要件を満たすなど、調査資格を取るためのステップとして有用です。
  • Q: 「アスベスト診断士」という資格も耳にしますが、事前調査には関係ありますか?
    A: 「アスベスト診断士」は民間団体が認定する資格で、建物の石綿含有建材の劣化状態の評価などに用いられます。しかし法改正後の事前調査では、診断士ではなく国家資格である調査者講習修了者でなければなりません。診断士資格は知識習得には役立ちますが、法律上は建築物石綿含有建材調査者のような位置づけではない点に注意してください。
  • Q: 工作物石綿事前調査者の資格は今すぐ取得すべきでしょうか?
    A: 工作物の事前調査への資格義務化は2026年から適用されます。ただし講習は順次始まっており、工作物の解体やプラント改修に携わる可能性がある方は早めの取得を検討すべきです。新設資格のため初期の講習枠は限られることも予想されますし、2026年が近づくと駆け込みで混雑する可能性もあります。自社業務で工作物解体の予定がある場合は前倒しで資格者を育成しておくと安心です。
  • Q: 建物オーナーや発注者自身が資格を持っていないと違法になりますか?
    A: 発注者本人が資格を持つ必要はありませんが、事前調査は資格を持つ専門家に依頼する必要があります。法律上は「事前調査を資格者に行わせること」が義務です。発注者やオーナーは有資格の業者やコンサルタントに調査を依頼し、その結果を書面で受け取って行政への報告を行う流れになります。無資格者に調査を行わせたり事前調査自体を怠ると、行政指導や工事の停止命令、罰則の対象となる可能性がありますので注意しましょう。

まとめ

アスベストの事前調査に関わる資格には、建築物・工作物それぞれに専門の調査者資格があり、さらに除去作業には作業主任者資格が必要になります。法改正により資格の重要性は一段と増しており、解体や改修に関わる企業は計画的に人材育成や外部専門家の活用を進めることが求められます。この記事で整理したポイントを参考に、対象となる建物・構造物に応じて適切な資格者を配置し、法令遵守と安全確保に努めましょう。必要な資格を備えたうえで事前調査を確実に実施することが、働く人々や周辺環境をアスベスト被害から守る第一歩です。安心・安全な施工のために、ぜひ早めの資格取得や専門家への相談を検討してみてください。

アスベスト事前調査は「アスベストバスターズ」へご相談ください

建築物・工作物の解体・改修工事では、事前に有資格者によるアスベスト調査が義務となっています。

  • 建築物石綿含有建材調査者(建築物の調査に対応)
  • 工作物石綿事前調査者(2027年1月から義務化予定の工作物調査に対応)

アスベストバスターズでは、全国対応の有資格者ネットワークを整備し、複数拠点や急ぎの案件にも柔軟に対応しています。
また現在、工作物の調査に備えて資格取得・専門人材の育成・体制整備も進行中です。今後の工事計画に備えた早期相談も歓迎しています。

調査のご相談・見積りは無料です、どうぞお気軽にお問い合わせください。 無料で相談する

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ライター情報

アスベストバスターズ編集部は、アスベスト調査・除去に関する専門的知識を提供する編集チームです。
読者が直面するかもしれない問題に対処し、安全な作業環境を保証するための実用的なアドバイスと正確な情報を提供することを使命としています。アスベストバスターズ編集部は、アスベスト関連の最新情報を分かりやすく解説し、読者に信頼される情報源であり続けることを目指しています。

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