この記事の要点
- 国土交通省・経済産業省が提供する「石綿(アスベスト)含有建材データベース」は、解体・改修工事前の事前調査における重要な初期ステップです。
- データベースの検索結果(ヒットすれば含有あり、ヒットしなければ不明)に応じて、事業者が取るべき法的義務と次のアクションが明確に異なります。
- データベースの情報はあくまで参考情報であり、最終的なアスベストの有無の判断は、必ず「建築物石綿含有建材調査者」による現地調査に基づいて行う必要があります。
- 労働安全衛生法や大気汚染防止法などの関連法令を遵守しない場合、厳しい罰則や社会的信用の失墜といった重大なリスクを伴います。
はじめに:法令遵守と安全確保に不可欠なアスベストデータベースの重要性

建設・解体業界において、アスベスト(石綿)対策は避けて通れない最重要課題の一つです。年々厳格化される法規制、特に解体・改修工事における事前調査の義務化は、すべての事業者にとって喫緊の対応を迫るものとなっています。この複雑で責任の重い業務を遂行する上で、強力な味方となるのが、国が提供する「石綿(アスベスト)含有建材データベース」です。しかし、このデータベースの存在を知っていても、「具体的にどう使えばいいのか」「検索結果をどう解釈し、次の行動に移せば良いのか」といった点で、戸惑いを感じている現場責任者や担当者の方も少なくないのではないでしょうか。
本記事は、まさにそうした法令遵守と安全確保の最前線に立つ事業者の皆様のために、アスベストデータベースの基本的な知識から、具体的な検索チュートリアル、そして最も重要な「検索結果に基づく次のアクション」までを、体系的かつ実践的に解説します。この記事を最後までお読みいただくことで、データベースを最大限に活用し、法的なリスクを回避しながら、作業員の安全を確保し、円滑に工事を進めるための確かな知識と手順を身につけることができます。貴社のコンプライアンス体制を盤石にするための一助となれば幸いです。
石綿(アスベスト)含有建材データベースとは?事業者が知るべき基本

アスベストデータベースは、解体・改修工事の事前調査プロセスにおいて、事業者が最初に行うべき「書面調査」を強力にサポートする公的なツールです。このデータベースを正しく理解し、活用することは、効率的かつ正確な調査の第一歩となります。ここでは、事業者が押さえておくべきデータベースの基本的な概要について解説します。具体的には、誰がどのような目的で提供しているのか、どのような情報が掲載されているのか、そしてどこからアクセスできるのか、という3つの核心的なポイントを明確にします。
このデータベースは、過去に国内で製造・販売された膨大な数の建材に関する情報を集約したものであり、その情報を参照することで、使用されている建材にアスベストが含まれている「可能性」を迅速にスクリーニングできます。ただし、重要なのは、これが万能のツールではないという認識です。データベースの情報を基点としながらも、その後の現地調査や専門家との連携がいかに重要であるかを理解することが、法令遵守と安全確保の鍵となります。まずは、このツールの全体像を正確に把握することから始めましょう。
データベースの目的と提供元(国土交通省・経済産業省)
「石綿(アスベスト)含有建材データベース」は、国土交通省と経済産業省が共同で構築・公開している公式な情報源です。その主な目的は、建築物の解体・改修工事を行う事業者が、労働安全衛生法(およびその下の石綿障害予防規則)に基づき義務付けられている「事前調査」を円滑に進められるよう支援することにあります。
具体的には、建材メーカー各社から提供された情報を集約し、過去に製造された製品のアスベスト含有状況(含有の有無、含有率、石綿の種類など)を公開しています。これにより、事業者は設計図書などと照らし合わせながら、工事対象の建築物に使用されている可能性のある建材を効率的に特定し、リスクの初期評価を行うことが可能になります。このデータベースは、安全な作業計画の立案と法令遵守の徹底を目指す事業者にとって、信頼性の高い第一情報源と言えるでしょう。
データベースで検索できる情報の種類と範囲
このデータベースでは、アスベスト含有の可能性がある建材に関する多岐にわたる情報を検索できます。事業者が特に注目すべき主な情報は以下の通りです。
- 製品名・商品名
- 製造メーカー名
- 製造時期(年・月)
- 含有している石綿の種類(クリソタイル、アモサイトなど)
- 石綿含有率(重量%)
- 建材の種別(吹付け材、保温材、成形板など)
- 製品の写真やカタログ(一部)
これらの情報は、メーカーからの自己申告に基づいており、網羅性を目指してはいますが、すべての建材情報が登録されているわけではない点に注意が必要です。特に古い建材や中小メーカーの製品については、情報が不足しているケースもあります。あくまで「書面調査」の一環として活用するツールと位置づけましょう。
【公式】石綿(アスベスト)含有建材データベースへのリンク
アスベストの事前調査を行う上で、この公式データベースへのアクセスは必須です。以下のリンクから直接データベースのウェブサイトへアクセスできます。現場での確認や事務所での書類作成の際に、すぐに参照できるようブックマークしておくことを強く推奨します。
このサイトが、本記事で解説するすべての操作の基点となります。実際にサイトを開きながら読み進めていただくと、より理解が深まります。
国土交通省・経済産業省
石綿(アスベスト)含有建材データベース
【チュートリアル】アスベストデータベースの具体的な使い方・検索手順
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アスベストデータベースの価値を最大限に引き出すには、その機能を正しく理解し、効果的に使いこなす技術が求められます。このセクションでは、実際の調査業務を想定し、データベースの検索手順をステップバイステップで具体的に解説します。単なる機能紹介に留まらず、現場で直面するであろう「どのキーワードで検索すれば良いのか」「検索オプションはどう使い分けるのか」といった実践的な疑問に答えるためのコツも交えて説明します。このチュートリアルを通じて、データベースを初めて使う方はもちろん、これまで何となく使っていた方も、より確信を持って、効率的かつ網羅的な情報検索を行えるようになることを目指します。設計図書や現地で確認した建材の情報を手に、このガイドに沿って操作を進めてみてください。画面スクリーンショットを示しつつ説明いたします。
ステップ1:検索条件の入力(建材名、施工年・改修年、不燃材料等認定番号など)
データベースのトップページにアクセスすると、検索条件を入力する画面が表示されます。ここで、事前調査の第一段階である「書面調査」で得られた情報を入力します。主な入力項目は以下の通りです。
- キーワード:建材の製品名や一般的な名称(例:「ケイカル板」「スレートボード」)を入力します。設計図書や仕様書に記載されている名称を正確に入力するのが基本です。
- メーカー名:建材を製造したメーカー名が分かっている場合に入力します。正式名称が不明でも、一部を入力すれば候補が表示される場合があります。
- 製造時期:検索条件入力に建材の製造時期を直接指定する項目はありません。そのため、施工年・改修年という項目を設定することが非常に重要です。これらの項目から、建材が製造されたであろう時期を絞り込みます。特にアスベスト規制が強化されていった1975年~2006年の期間は、重点的に確認する必要があります。「〇〇年から〇〇年まで」という範囲指定が可能です。
- 建材の種別:「建材名(一般名)」から選択できます。また、「施工部分」や「使われ方」を指定することも可能です。これらの項目で絞り込むと、検索結果の精度が向上します。
最初からすべての項目を埋める必要はありません。まずは最も確実な情報(例:建材の一般的な名称と製造時期)から入力し、徐々に条件を追加・変更して検索するのが効率的です。焦らず、手元にある情報を整理しながら入力しましょう。
効果的なキーワード選定と絞り込みのコツ
データベース検索の成否は、キーワード選定にかかっていると言っても過言ではありません。思うような結果が得られない場合、以下のコツを試してみてください。
- 一般的名称から試す:設計図書に記載された固有の製品名でヒットしない場合、「スレート屋根材」「ロックウール吸音板」「ビニル床タイル」といった、より一般的な建材カテゴリ名で検索してみましょう。
- 略称や通称も活用する:現場で使われる略称(例:「ケイカル板」→「ケイ酸カルシウム板」)や、異なる漢字表記(例:「石膏」→「せっこう」)も試す価値があります。
- AND/OR検索を理解する:複数のキーワードをスペースで区切って入力すると、AND検索(すべての単語を含む)になります。OR検索には対応していません。範囲を広げたい場合は、一つずつ単独のキーワードで検索するのが基本です。
重要なのは、一度の検索で諦めないことです。様々な角度からキーワードを試し、徐々に候補を絞り込んでいくアプローチが、目的の情報にたどり着くための鍵となります。
詳細条件の入力方法について
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より効率的に検索するために詳細条件を指定することも可能です。入力方法項目によって異なります。各項目に応じた方法でご入力ください。
建材名(一般名):
名称の揺れによる検索不具合を防ぐため、プルダウンからの選択式になっています。リストから該当する建材名を正確に選択してください。
施工年・改修年:
該当する施工年または改修年を西暦で入力してください。
不燃材料等認定番号:
この項目には「完全一致」オプションがあります。あいまい検索も可能です。正確な認定番号が分かっている場合は、完全一致オプションを選択してください。
施工部分・使われ方:
建材が使用されている具体的な施工部分や使われ方を、チェックボックスから選択してください。(例:屋根、外壁、トイレ壁、浴室天井、煙突など)
ステップ2:検索結果一覧の確認と詳細情報の表示

検索条件を入力して実行すると、該当する建材の一覧が結果として表示されます。この一覧画面には、以下の情報が簡潔にまとめられています。
- 商品名
- 建材名(一般名)
- 型番・品番
- 製造時のメーカー
- 製造期間
- 含有率
- 種類
- 不燃材料認定
この段階でまず注目すべきは、商品名や建材名の欄です。この一覧には石綿を含有する建材のみが表示されるため、商品名や建材名から特定を進めることができます。また、製造時期が、調査対象の建物の竣工時期や改修時期と一致しているかを確認することも重要です。一覧の中から、手元の資料(設計図書、仕様書など)や現地で確認した建材の商品名や建材名、特徴と最も合致する可能性が高いものを探します。
例えば、1985年築のビルの天井材を調べている場合、一覧の中から製造時期が「1980年~1988年」といった範囲に含まれる天井材の製品を探し出します。該当する可能性のある製品を見つけたら、その製品名をクリックすることで、より詳細な情報が掲載されたページへと進むことができます。一覧情報だけでなく、詳細ページで必ず内容をご確認ください。
ステップ3:詳細情報(建材名、製造期間、特徴など)の読み解き方

検索結果一覧から特定の製品を選択すると、その建材に関する詳細情報ページが表示されます。ここで確認すべき重要なポイントは以下の通りです。
- 建材名:詳細ページには、その建材の正式名称が記載されています。現地で確認した建材の名称と照合することで、製品の特定精度を高めることができます。
- 規格等:建材の規格や品番などが記載されている場合があります。これにより、より具体的な製品情報を得ることができ、特定に役立ちます。
- 製造期間:その建材が製造された期間が示されています。アスベスト含有建材は特定の期間に製造されたものが多いため、この情報から含有の可能性を判断する重要な手がかりとなります。
- 建材の特徴(性質、寸法、形状など):建材の物理的な特徴(表面の質感、色、厚み、幅、長さ、形状など)が詳細に記述されています。現地で確認した建材の見た目や触感と照合することで、製品の特定精度を格段に高めることができます。
- 主な施工部分、使われ方など:その建材がどのような場所(例:天井、壁、床、屋根など)に、どのような目的(例:断熱材、吸音材、外装材など)で使われることが多いかが記載されています。これにより、現場での建材の使われ方と照らし合わせ、特定の手がかりとすることができます。
これらの詳細情報を総合的に読み解き、調査対象の建材との同一性を慎重に判断します。
検索結果の解釈と、事業者が取るべき次のアクション
アスベストデータベースには、石綿が含まれると確認された建材の情報のみが掲載されています。そのため、検索結果を正しく理解し、適切な行動をとることが、法令遵守と安全のために重要です。検索結果は、「石綿含有あり」と表示されるか、情報が見つからない(検索結果が表示されない)かの2パターンです。特に注意すべきは、データベースに情報がない場合でも、それが「石綿なし」を意味するわけではない点です。
このセクションでは、各ケースにおいて事業者が直面する状況を想定し、取るべき次のアクションを明確なフローとして解説します。この指針に従うことで、担当者は迷うことなく、法的要件を満たした適切な対応を迅速に進めることができます。
ケース1:「石綿含有あり」と表示された場合の対応フロー
データベースで調査対象の建材が「石綿含有あり」と明確に表示された場合、それは事前調査における重要な発見です。この結果に基づき、以下の対応を速やかに進める必要があります。
- アスベスト含有建材として扱う:データベースの結果を基に、その建材を「石綿含有建材」として特定します。
- レベル分類の確認:建材の種類(吹付け材、保温材、成形板など)から、ばく露防止対策のレベル(レベル1~3)を判断します。
- 作業計画の策定:特定されたレベルに応じた、法規定に基づく適切な除去・封じ込め等の作業計画を策定します。これには、作業場の隔離、負圧除じん機の設置、作業員の保護具の選定などが含まれます。
- 関係各所への届出:レベル1、レベル2建材の除去作業等を行う場合、労働基準監督署および地方公共団体(都道府県や市など)への事前の届出が法律で義務付けられています。
- 有資格者による作業の実施:実際の作業は、石綿作業主任者などの有資格者の管理下で、特別教育を受けた作業員が行う必要があります。
「含有あり」と判断した場合は、厳格な管理下での作業が求められます。直ちに法的手続きと安全対策の準備に取り掛かりましょう。
ケース2:データベースに情報がない(検索結果が表示されない)場合の必須対応
アスベストデータベースで検索しても該当する建材が見つからない、あるいは含有状況が「不明」と判断されるケースは、実務上、頻繁に発生します。重要なのは、アスベストデータベースが「含有あり」の建材情報のみを掲載しているという点です。したがって、データベースに情報がない場合でも、それは「石綿含有なし」を意味するものでは決してありません。事業者は以下の原則と注意点を必ず理解しておく必要があります。
原則:「石綿(アスベスト)含有とみなす」
これが最も重要な原則です。書面調査(データベース検索を含む)で含有の有無が明らかにならなかった建材は、すべて「アスベスト含有の可能性がある」ものとして扱わなければなりません。この「みなし措置」に基づき、次のステップに進みます。
- 情報の限界を認識する:データベースの情報は、あくまでメーカーから提供された特定の製品に関するものです。現場にある建材が、データベース上の製品と「完全に同一である」という保証はありません。類似の別製品や、記録に残っていない製品である可能性も考慮すべきです。
- 現地での目視確認は必須:データベースに情報がない場合でも、建築物石綿含有建材調査者による現地での目視確認は省略できません。設計図書と現場の状況が一致しているか、専門家の目で確認することが重要です。
目視調査の結果、専門家が「データベースの情報だけでは断定できない」「疑わしい点がある」と判断した場合、あるいは「みなし措置」を解除して非含有を証明したい場合は、以下の対応が必要です。
- 専門家による現地調査の実施:建築物石綿含有建材調査者が現地で建材を直接確認(目視調査)します。専門家は、建材の材質、施工方法、設置場所、年代などから、アスベスト含有の可能性をより高い精度で判断します。
- 分析調査による確定診断:目視調査でも判断が困難な場合、あるいは「みなし措置」を解除して非含有を証明したい場合は、建材の一部を採取し、専門の分析機関で分析調査を行います。この分析結果が、アスベスト含有の有無を確定させる最終的な証拠となります。
データベースに情報がない場合は、調査を次の段階、すなわち「現地調査・分析調査」へ進めるべき明確なサインです。この段階を省略することは、法令違反に直結する極めて危険な行為です。必ず有資格者に調査を依頼し、科学的根拠に基づいた判断を下すように徹底してください。
【実践編】シナリオ別データベース活用事例

次に実際の工事シナリオにおいて、アスベストデータベースがどのように活用されるのかを見ていきましょう。ここでは、建設・解体現場で頻繁に遭遇するであろう2つの具体的なケースを取り上げます。「1980年代築の事務所ビル」と「木造戸建て住宅」という、特性の異なる建物を例に、データベースを使った事前調査のプロセスをシミュレーションします。これらの事例を通じて、読者である事業者の皆様が、ご自身の業務に内容を当てはめ、データベース活用の具体的なイメージを掴むことを目的としています。単なる検索作業ではなく、設計図書との照合、現地状況の予測、そして専門家による調査への橋渡しとして、データベースがいかに機能するかを実感いただければ幸いです。
事例1:1980年代築の事務所ビルの改修工事における事前調査
【状況】
ある建設会社が、1985年竣工の事務所ビルの内装改修工事を請け負いました。工事範囲には、天井と床の張り替えが含まれます。現場責任者は、アスベスト事前調査の第一段階として、データベースの活用に着手しました。
【データベース活用プロセス】
- 書面調査:まず、保管されていた竣工図面を確認。天井材として「A社製 ロックウール吸音天井板」、床材として「B社製 Pタイル」との記載を発見しました。
- データベース検索(天井材):責任者はデータベースにアクセスし、メーカー名「A社」、キーワード「ロックウール吸音天井板」、製造時期「1980年~1985年」で検索。結果、複数の製品がヒットし、その多くに「石綿含有あり(クリソタイル 0.1-5%)」との表示がありました。
- データベース検索(床材):次に、メーカー名「B社」、キーワード「Pタイル」、製造時期「1980年~1985年」で検索。こちらも同様に、「石綿含有あり」の製品が複数見つかりました。
- 次のアクション:データベース検索の結果、天井材・床材ともにアスベスト含有の可能性が極めて高いと判断。責任者は直ちに建築物石綿含有建材調査者に連絡し、現地調査を依頼。調査者はデータベースの情報を参考に、現地で該当建材の目視確認とサンプリング箇所を効率的に特定し、分析調査へと進めました。
この事例では、データベースが初期段階でリスクを明確にし、専門家による効率的かつ的確な現地調査へと繋げる重要な役割を果たしました。
事例2:木造戸建て住宅の解体工事での活用ポイント
【状況】
ある解体業者が、1992年築の木造2階建て住宅の解体工事を受注しました。設計図書が残っておらず、書面調査が困難な状況です。
【データベース活用プロセス】
- 現地での初期確認:担当者が現地を訪れ、外壁には窯業系サイディング、屋根にはスレート瓦が使用されていることを目視で確認しました。しかし、メーカーや製品名は不明です。
- データベースでの推定検索:担当者は事務所に戻り、データベースで「建材の種別」を「成形板」に設定。製造時期を「1990年~1995年」とし、キーワードに「窯業系サイディング」と入力して検索。多数のメーカーから、この時期にアスベストを含有する製品と含有しない製品の両方が製造されていたことが判明しました。屋根材についても同様に「スレート」で検索し、同様の結果を得ました。
- 活用のポイントと次のアクション:この検索により、「この年代のサイディングとスレート瓦にはアスベストが含まれている可能性がある」という具体的な仮説を立てることができました。製品を特定するには至りませんでしたが、調査の焦点を絞り込むことができました。この情報を基に、建築物石綿含有建材調査者に調査を依頼。調査者は特に外壁と屋根を重点的に確認し、サンプリングを実施。結果、屋根のスレート瓦からアスベストが検出され、適切な除去計画を立てることができました。
図面がない場合でも、データベースは含有可能性のある建材を推定し、専門家による調査の精度と効率を高めるために役立ちます。
データベース利用の注意点と情報の限界

アスベストデータベースは非常に強力なツールですが、その利用にあたっては、いくつかの重要な注意点と、情報が持つ本質的な限界を理解しておく必要があります。このツールを「万能の答え」と誤解してしまうと、かえって大きなリスクを招きかねません。このセクションでは、データベースの情報を扱う上での健全な懐疑心と、専門家の判断を尊重する姿勢の重要性を強調します。具体的には、データベースの情報が法的にどのような位置づけにあるのか、情報の網羅性や更新頻度はどうなっているのか、そしてなぜ最終的に専門家への相談が不可欠なのかを解説します。
情報は参考情報:最終判断は現地調査で
最も重要な注意点は、データベースに掲載されている情報は、法的には「参考情報」であるという位置づけです。データベースの検索結果をもって、事前調査が完了したことにはなりません。
なぜなら、データベースは「特定のメーカーが製造した特定の製品」に関する情報であり、今まさに目の前にある建材が「その製品と完全に同一である」ことを保証するものではないからです。類似品、模倣品、あるいは記録に残っていない製品である可能性は常に存在します。
したがって、法律が求める事前調査の義務を完全に履行するためには、データベースでの書面調査に加え、必ず「建築物石綿含有建材調査者」による現地での目視調査、そして必要に応じた分析調査が不可欠です。最終的なアスベスト含有の有無の判断は、現場の状況を熟知した専門家が下すべきものであることを、決して忘れないでください。
情報の網羅性と更新頻度について
データベースは、多くの建材メーカーの協力のもと、膨大な情報が集約されていますが、その網羅性は100%ではありません。過去に存在したすべての建材メーカーや、すべての製品情報が登録されているわけではないのが実情です。特に、すでに廃業したメーカーの古い製品や、小規模なメーカーの製品については、情報が見つからないケースも少なくありません。
また、情報は定期的に更新されていますが、リアルタイムで最新情報が反映されるわけではありません。このため、情報の「抜け」や「漏れ」が存在する可能性を常に念頭に置いて利用する必要があります。
専門家(建築物石綿含有建材調査者)への相談の重要性
これまでの注意点を踏まえると、なぜ専門家、すなわち「建築物石綿含有建材調査者」への相談が不可欠であるかが明確になります。我々アスベスト事前調査の専門家は、単に資格を持っているだけでなく、豊富な知識と経験を持っています。
- 的確な現地調査:データベースの情報や図面と、実際の建材を照合し、微妙な違いを見抜くことができます。
- 総合的な判断:建材の見た目、施工方法、建物の年代など、様々な情報からアスベスト含有のリスクを総合的に評価します。
- 適切なサンプリング:分析調査が必要な場合、最も代表的で安全な箇所から建材サンプルを採取する技術を持っています。
- 法令遵守の担保:複雑な法規制を熟知しており、調査から報告書作成まで、法令に準拠したプロセスを保証してくれます。
データベースは誰でも参照できる優れたツールですが、その結果の解釈と最終判断は、必ず専門家と共に行うようにしてください。
アスベストデータベースに関するよくあるご質問(FAQ)
ここでは、アスベストデータベースを利用する事業者の皆様から、特によく寄せられる質問とその回答をまとめました。日々の業務で生じる具体的な疑問を解消するための一助としてご活用ください。
Q1. データベースで検索しても建材が見つからない場合はどうすればいいですか?
データベースで該当する建材情報が見つからない場合、法律上の原則として「石綿(アスベスト)含有ありとみなす」必要があります。これは「みなし措置」と呼ばれ、安全を最優先するための重要なルールです。この段階で調査を終了してはいけません。必ず、建築物石綿含有建材調査者などの専門家に連絡し、現地での目視調査を依頼してください。専門家が現地で建材を直接確認し、それでも判断が難しい場合は、建材の一部を採取して分析機関に送る「分析調査」を行い、含有の有無を科学的に確定させる必要があります。
Q2. データベースの情報だけで事前調査報告書を作成できますか?
いいえ、できません。データベースの情報は、事前調査の一部である「書面調査」に該当しますが、それだけでは不十分です。法令で定められた事前調査は、「書面調査」「現地での目視調査」、そして必要に応じて行われる「分析調査」の3つで構成されます。したがって、事前調査報告書には、データベースの調査結果に加えて、必ず有資格者による現地での目視調査の結果を記載しなければなりません。データベースの結果のみで報告書を作成した場合、事前調査義務違反とみなされる可能性があるため、絶対に行わないでください。
Q3. スマートフォンでも利用できますか?
はい、利用できます。石綿含有建材データベースのウェブサイトは、スマートフォンやタブレットのブラウザからもアクセスできるように設計されています。そのため、現場で急に確認が必要になった際など、手軽に情報を検索することができ非常に便利です。ただし、検索結果の一覧性や詳細情報の視認性の観点からは、画面の大きいパソコンでの利用が推奨されます。特に、複数の候補を比較検討したり、報告書作成のために情報を整理したりする際には、事務所のパソコンでじっくりと作業する方が効率的でしょう。
まとめ:アスベストデータベースを正しく活用し、安全な工事と法令遵守を徹底する

本記事では、石綿(アスベスト)含有建材データベースの基本から、具体的な活用法、結果の解釈、そして法的背景までを網羅的に解説しました。このデータベースは、事業者が法令を遵守し、作業員と公衆の安全を確保するための第一歩として、極めて有効なツールです。しかし、その真価は、情報の限界を理解し、必ず専門家である「建築物石綿含有建材調査者」による現地調査と組み合わせることで初めて発揮されます。データベースを正しく活用し、安全な工事とコンプライアンスの徹底を実現させましょう。