アスベストの使用はいつから禁止?年代別の規制と建物所有者が今すべきことを徹底解説

この記事の要点

  • アスベスト(石綿)は、2006年に重量の0.1%を超える製品の製造・使用が原則禁止され、2012年に全面禁止となりました。
  • 2006年以前に建てられた建物は、アスベスト含有建材が使用されている可能性があり、特に注意が必要です。
  • 2022年4月から、建物の解体・改修工事を行う際の「アスベスト事前調査」が義務化され、違反には罰則が科されます。
  • 所有する建物の建築年代を確認し、不安な場合は専門家による調査を行うことが、法遵守と安全確保のために不可欠です。
目次

アスベストはいつから禁止された?結論と規制の全体像

「うちの建物はアスベストを使っているのだろうか?」建物の所有者や管理者の方であれば、一度はこんな不安を抱いたことがあるかもしれません。アスベスト(石綿)が健康に深刻な被害を及ぼすことは広く知られていますが、具体的にいつから法律で禁止されたのか、その経緯は複雑で分かりにくいものです。この記事では、アスベスト規制の歴史から、現在所有者が負うべき法的な義務、そして万が一アスベストが疑われる場合の具体的な対処法まで、専門的な知見に基づき、分かりやすく解説します。

結論:2006年に原則禁止、2012年に完全禁止へ

結論から言うと、アスベストは2006年(平成18年)9月1日に、重量の0.1%を超えて含有する製品の製造、輸入、譲渡、提供、使用が原則として禁止されました。これが実質的な禁止措置の始まりです。その後、一部で認められていた猶予措置も撤廃され、2012年(平成24年)3月には、アスベストおよびアスベストを0.1%を超えて含有する全てのものの製造・使用等が全面的に禁止されました。つまり、現在ではアスベストを新たに建材として使用することは、法律で固く禁じられています。

なぜ規制は複雑?段階的に強化された背景

アスベストの規制が「2006年に原則禁止」と一言で片付けられないのは、その危険性が徐々に明らかになり、規制が段階的に強化されてきた歴史があるためです。かつて「奇跡の鉱物」と呼ばれ、あらゆる建材に広く利用されていたため、社会経済への影響も考慮しながら、特に危険性の高いものから順次、使用が制限されていきました。この複雑な経緯が、一般の方にとって分かりにくさの原因となっています。

【時系列】アスベスト規制強化の全歴史|1975年から全面禁止まで

【時系列】アスベスト規制強化の全歴史|1975年から全面禁止まで

アスベストの規制は、一度にすべてが禁止されたわけではありません。約40年という長い年月をかけて、その危険性の認識の高まりとともに、段階的に強化されてきました。ここでは、日本の法規制がどのように変遷してきたのか、その全歴史を時系列で詳しく見ていきましょう。ご自身の建物の建築年と照らし合わせることで、リスクを把握する重要な手がかりとなります。

〜1975年:規制なき時代と石綿(アスベスト)の大量使用

1975年以前の日本では、アスベストの危険性に対する認識が低く、法的な規制はほとんど存在しませんでした。アスベストは耐火性、断熱性、防音性に優れ、かつ安価であったため、ビルや工場、一般住宅に至るまで、あらゆる建築物のスレート材、保温材、内装材などに大量に使用されました。特に1960年代の高度経済成長期には、その使用量がピークに達したと言われています。この時期に建てられた建物は、アスベスト含有のリスクが最も高い年代と考えられています。

1975年(昭和50年):最初の規制「吹き付けアスベスト」の原則禁止

アスベストによる健康被害が社会問題として認識され始め、日本で最初の規制が設けられたのが1975年です。この年、労働安全衛生法施行令が改正され、特に飛散性が高く危険とされる「吹き付けアスベスト」の作業が原則として禁止されました。ただし、この時点ではアスベスト含有率が5%を超えるものに限られており、アスベスト含有建材そのものの製造や使用が禁止されたわけではありませんでした。この規制は、アスベスト対策の第一歩として重要な意味を持ちます。

1995年(平成7年):より危険性の高い2種のアスベスト使用禁止

1995年には、規制がさらに一歩進みます。アスベストにはいくつかの種類がありますが、その中でも特に発がん性が高いとされるクロシドライト(青石綿)とアモサイト(茶石綿)の2種類について、含有率が1%を超える製品の製造、輸入、使用などが禁止されました。この改正は、アスベストの種類によって健康へのリスクが異なることを考慮したもので、より危険な物質から優先的に排除していくという方針が示された形です。しかし、一般的に最も多く使用されていたクリソタイル(白石綿)は、この時点では規制の対象外でした。

2004年(平成16年):石綿含有建材など10品目の製造等禁止

2000年代に入ると、アスベスト規制はさらに加速します。2004年には、これまで規制対象外だったクリソタイル(白石綿)を含む建材にもメスが入りました。石綿セメント円筒、押出成形セメント板、住宅屋根用化粧スレート、繊維強化セメント板、窯業系サイディングなど、アスベストを1%を超えて含有する10品目の建材や摩擦材の製造、輸入、使用が禁止されました。これにより、多くの建材メーカーが代替品への切り替えを余儀なくされ、アスベストからの脱却が大きく進みました。

2006年(平成18年):アスベスト含有率0.1%超の製品が原則禁止へ

アスベスト規制の歴史において、最も大きな転換点となったのが2006年です。この年、労働安全衛生法が改正され、アスベストの含有率基準が従来の「1%」から「0.1%」へと大幅に引き下げられました。そして、この基準を超えるすべてのアスベスト含有製品について、製造、輸入、譲渡、提供、使用が原則として禁止されました。これが、一般的に「アスベストが禁止された年」として広く認識されている規制です。これにより、ごく一部の例外を除き、アスベスト含有製品は市場からほぼ姿を消すことになりました。

2012年(平成24年):猶予措置が撤廃され、アスベストが全面禁止に

2006年の原則禁止後も、代替が困難ないくつかの製品(特定のシール材やガスケットなど)については、例外的に使用が認められていました。しかし、技術開発が進み、これらの代替が可能になったことから、2012年3月をもって、すべての猶予措置が撤廃されました。これにより、日本国内におけるアスベストおよびアスベストを0.1%を超えて含有する製品の製造・使用は、例外なく全面的に禁止されることになりました。この2012年の措置をもって、日本の長いアスベスト規制の歴史は一つの区切りを迎えました。

【年代別】あなたの建物は大丈夫?アスベスト含有リスク早見表

【年代別】あなたの建物は大丈夫?アスベスト含有リスク早見表

アスベスト規制の歴史を理解すると、ご自身の建物の建築年代がアスベスト含有リスクを判断する上で非常に重要な指標であることがわかります。ここでは、建築年代ごとのリスクレベルをまとめた早見表と、特に注意すべき建物の特徴について解説します。この情報を元に、ご自身の建物の状況を客観的に把握してみましょう。

建築年代から見るアスベスト含有の可能性

建物の竣工年(完成した年)は、アスベスト含有のリスクを判断する最も分かりやすい目安です。規制が強化される前の年代に建てられた建物ほど、アスベスト含有建材が使用されている可能性は高くなります。以下の表は、建築年代とアスベスト含有リスクの一般的な関係を示したものです。あくまで目安ですが、所有する建物の登記簿謄本などで建築年月日を確認し、照らし合わせてみてください。

建築年代アスベスト含有リスク主な状況
〜1975年(昭和50年)非常に高い規制がなく、吹き付けアスベストを含む多種多様な建材にアスベストが使用されていた可能性が高い時期。
1976年〜1995年(平成7年)高い吹き付けアスベストは原則禁止されたが、耐火被覆材や断熱材、スレートボードなど多くの建材で依然として使用されていた時期。
1996年〜2006年(平成18年)可能性がある規制が段階的に強化されたが、屋根材や外壁材、内装材などでアスベスト含有製品がまだ使用されていた可能性がある時期。
2007年(平成19年)以降低い原則禁止後であり、アスベスト含有建材が使用されている可能性は極めて低い。ただし、設計・着工時期によっては注意が必要な場合もある。

特に注意が必要な建物の特徴とアスベストが使われやすい場所

建築年代に加えて、建物の構造や用途、そしてどの部分にアスベストが使われやすいかを知ることも重要です。特に以下の特徴を持つ建物は注意が必要です。

  • 鉄骨造の建物:耐火被覆材として、柱や梁に吹き付けアスベストが使用されている可能性があります。特に大規模な駐車場や機械室、ボイラー室などは要注意です。
  • 工場や倉庫:屋根や外壁に波板スレートが多用されている場合、アスベストを含んでいる可能性があります。
  • 古い公共施設やビル:天井裏や壁の内部に、断熱・吸音材としてアスベスト含有のボードが使われていることがあります。

具体的にアスベストが使われやすい場所としては、以下が挙げられます。

  • 屋根:住宅用化粧スレート(コロニアル、カラーベストなど)
  • 外壁:窯業系サイディング、石綿セメント板
  • 内装:天井や壁の石膏ボード、ビニール床タイル
  • 配管・ダクト:保温材、断熱材
  • 天井裏・機械室:吹き付けアスベスト、耐火被覆板

これらの場所に劣化や損傷が見られる場合は、アスベスト繊維が飛散するリスクが高まるため、特に慎重な対応が求められます。

【所有者・管理者必見】2022年から義務化!アスベスト事前調査のすべて

過去の建材にアスベストが含まれている可能性がある一方で、現在、建物の所有者や管理者にとって最も重要なのが、法改正によって定められた「事前調査の義務化」です。これは、単に「知っておくべき知識」ではなく、「遵守しなければならない法的義務」です。知らなかったでは済まされない重要なルールについて、対象となる工事から罰則規定まで、詳しく解説します。

アスベスト事前調査の義務化とは?対象となる工事

2022年4月1日から、大気汚染防止法および石綿障害予防規則に基づき、建物の解体・改修工事を行う際には、アスベスト(石綿)の使用の有無を事前に調査することが義務付けられました。これは、工事中に作業員や周辺住民がアスベストにばく露することを防ぐための重要な措置です。原則として、建築物の解体・改修を行うすべての工事が対象となります。具体的には、以下の工事が該当します。

  • 解体工事:建築物の一部または全部を解体する工事。
  • 改修工事:建築物の壁や天井、床などを除去・補修するリフォームやリノベーション工事。塗装の塗り替えで下地調整(ケレン作業など)を行う場合も含まれます。

請負金額の大小にかかわらず、これらの工事を行う元請業者は、事前調査を行い、その結果を発注者(建物の所有者など)に書面で説明し、現場に掲示する義務があります。

2023年10月からの変更点:有資格者による調査の必須化

事前調査の義務化はさらに強化されています。2023年10月1日からは、建築物のアスベスト事前調査は、専門の資格を持つ者が行うことが必須となりました。これにより、調査の信頼性と精度を確保することが目的とされています。必要な資格は以下の通りです。

  • 特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)
  • 一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者)
  • 一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て調査者) ※戸建て住宅等の調査に限定

建物の所有者や管理者が解体・改修工事を発注する際は、調査を行う業者がこれらの資格を保有しているかを必ず確認する必要があります。資格を持たない者による調査は法律違反となります。

調査報告を怠った場合の罰則規定

アスベストの事前調査やその結果の報告を怠った場合、厳しい罰則が科せられます。これは、アスベスト飛散防止対策の重要性を国が重く見ていることの表れです。具体的には、大気汚染防止法に基づき、以下のような罰則が定められています。

  • 事前調査結果の報告義務違反:30万円以下の罰金
  • 除去等作業の基準不遵守:3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
  • 都道府県からの改善命令違反:6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金

これらの罰則は、工事の元請業者や下請業者に対して科せられますが、発注者である建物所有者も、適切な業者を選定し、法遵守を徹底させる責任があると言えるでしょう。安易な業者選定は、結果的に大きなリスクを招くことになります。

事前調査が不要となるケースとは?

原則としてすべての解体・改修工事で事前調査が必要ですが、一部、調査が不要となる例外的なケースも定められています。これらを正しく理解しておくことも重要です。

  • ごく小規模な改修工事:釘を打って固定する、既存の材料に穴を開けずに上から新しい材料を貼り付けるなど、アスベスト含有建材を損傷させるおそれのない軽微な作業。
  • 木材、金属、石、ガラスなど、アスベスト含有のおそれがないことが明らかな材料のみで構成されている部分の工事。
  • 2006年9月1日以降に設置の工事に着手した建築物であることが設計図書等で明らかな場合。

ただし、これらの判断は専門的な知識を要するため、自己判断は禁物です。「このくらいなら大丈夫だろう」という安易な考えが、法令違反や健康被害につながる可能性があります。不明な場合は、必ず専門家や自治体に相談することが賢明です。

アスベストが疑われる場合、所有者が取るべき具体的な3ステップ

「自分の建物は2006年以前に建てられたものだ」「近々、リフォームを考えているが、どうすればいい?」そんな不安や疑問を抱えた建物所有者・管理者のために、アスベストが疑われる場合に取るべき具体的な行動を3つのステップに分けて解説します。パニックにならず、一つひとつ着実に進めることが重要です。

ステップ1:専門家への相談と図面調査

まず最初に行うべきは、専門家への相談です。アスベスト調査会社や建築士など、専門知識を持つプロフェッショナルに連絡を取りましょう。その際、建物の設計図書(竣工図、仕様書など)が手元にあれば用意してください。専門家はこれらの書類を確認し、使用されている建材の種類や品番から、アスベスト含有の可能性をある程度推測することができます。これを「図面調査(書面調査)」と呼び、事前調査の第一段階となります。

ステップ2:現地調査と分析調査の依頼

図面調査でアスベスト含有の可能性がある、または図面がなくて判断できない場合は、次のステップとして現地での調査が必要になります。専門の調査員が実際に建物を訪れ、目視で建材の状態を確認します(現地調査)。さらに、アスベスト含有が疑われる建材が見つかった場合は、その一部を慎重に採取し、専門の分析機関に送って含有の有無と種類、含有率を確定させます。これが「分析調査」です。この分析結果をもって、法的なアスベスト含有の有無が確定します。

ステップ3:調査結果に基づく対策(除去・封じ込め・囲い込み)の検討

分析調査の結果、アスベスト含有が確認された場合、その建材の状況や今後の建物の利用計画に応じて、適切な対策を検討します。主な対策には以下の3つの工法があります。

  1. 除去工法:アスベスト含有建材を完全に取り除く最も根本的な対策です。
  2. 封じ込め工法:建材の表面に薬剤を吹き付け、アスベスト繊維が飛散しないように固めてしまう方法です。
  3. 囲い込み工法:アスベスト含有建材の上から、板状の材料などで完全に覆い隠し、室内空間と隔離する方法です。

どの工法を選択するかは、費用、工期、建物の状況などを総合的に判断し、専門業者と相談して決定します。

信頼できる調査・除去業者の選び方と費用目安

調査や除去を依頼する業者の選定は非常に重要です。必ず、建築物石綿含有建材調査者の資格を持つスタッフが在籍しているかを確認しましょう。また、複数の業者から見積もりを取り、費用だけでなく、調査方法や対策工事の内容、実績などを比較検討することが大切です。費用は建物の規模やアスベストの状況によって大きく異なりますが、一般的な木造戸建ての調査であれば数万円から、除去工事となると数十万円から数百万円かかる場合もあります。自治体によっては補助金制度を設けている場合もあるため、お住まいの市区町村に問い合わせてみることをお勧めします。

なぜ危険?アスベストが引き起こす健康被害と潜伏期間

なぜ危険?アスベストが引き起こす健康被害と潜伏期間

アスベストがなぜこれほど厳しく規制されるのか、その最大の理由は、目に見えないほど微細な繊維が引き起こす深刻な健康被害にあります。ここでは、アスベストが人体に及ぼす影響と、その恐ろしい特徴である「長い潜伏期間」について解説します。このリスクを理解することが、適切な対策を講じるための第一歩です。

代表的なアスベスト関連疾患(中皮腫、肺がん、石綿肺など)

アスベストの繊維を吸い込むことで発症する可能性のある病気は、主に以下のものが知られています。これらは、肺やその周辺組織に深刻なダメージを与えるものです。

  • 悪性中皮腫:肺を覆う胸膜や腹部を覆う腹膜などに発生する、予後が極めて悪いがんです。アスベストばく露との関連が非常に強い病気とされています。
  • 肺がん:アスベストばく露は、喫煙と並ぶ肺がんの主要な原因の一つです。アスベストばく露と喫煙が重なると、肺がんのリスクが相乗的に高まることが知られています。
  • 石綿肺(アスベスト肺):肺が線維化し、硬くなってしまう病気(じん肺の一種)です。進行すると呼吸機能が著しく低下し、息切れなどの症状が現れます。
  • びまん性胸膜肥厚:胸膜が広範囲にわたって厚くなる病気で、呼吸困難や胸の痛みを引き起こします。

これらの病気は、一度発症すると根治が難しいものが多く、だからこそアスベストを吸わないようにする「予防」が何よりも重要なのです。

数十年単位の長い潜伏期間という特徴

アスベストによる健康被害の最も恐ろしい特徴は、その「潜伏期間の長さ」です。アスベストを吸い込んでから病気を発症するまで、非常に長い年月がかかります。例えば、悪性中皮腫の場合、平均して30年から50年という極めて長い潜伏期間があるとされています。肺がんや石綿肺でも15年から40年程度かかると言われています。このため、過去にアスベストを扱う仕事をしていた方や、解体現場の近くに住んでいた方が、何十年も経ってから突然発症するというケースが後を絶ちません。症状が出たときには病気がかなり進行していることも多く、これがアスベスト問題の根深さ、深刻さの要因となっています。

知っておきたいアスベスト関連の救済・補償制度

知っておきたいアスベスト関連の救済・補償制度

過去にアスベストにばく露し、健康被害に遭われた方やそのご遺族を救済するため、国はいくつかの補償制度を設けています。建物の所有者・管理者として直接利用する機会は少ないかもしれませんが、アスベスト問題の社会的な側面を理解する上で重要な知識です。万が一、ご自身やご家族、従業員などが該当する可能性も考え、どのような制度があるのかを知っておきましょう。

建設アスベスト給付金制度

建設業務に従事していたことが原因でアスベスト関連疾患にかかった方やそのご遺族に対し、国が給付金を支給する制度です。これは、国が建設現場におけるアスベスト対策を怠った責任を認めたことに基づくもので、訴訟を起こさなくても、要件を満たせば迅速に給付金を受け取ることができます。対象となる病気や従事していた期間などに条件があるため、詳細は厚生労働省のウェブサイトや専門の弁護士に確認することが必要です。

建設アスベスト給付金制度は、建設業務に従事されたことによってアスベスト(石綿)を吸い込み、中皮腫や肺がんなどの病気にかかられた方やそのご遺族の方に対して、訴訟手続によらない救済を図るため、国から給付金等を支給する制度です。

厚生労働省「建設アスベスト給付金制度について」

石綿健康被害救済制度と労災保険

アスベストによる健康被害の救済制度には、大きく分けて2つの柱があります。

  1. 労災保険制度:仕事が原因で(業務上)アスベスト関連疾患にかかった労働者やその遺族が対象です。治療費や休業補償、遺族への年金などが給付されます。
  2. 石綿健康被害救済制度:労災保険の対象とならない方(例えば、ばく露の原因が仕事ではない方や、自営業者、アスベスト工場の周辺住民など)や、労災の時効が過ぎてしまった方が対象となります。医療費や療養手当、遺族への弔慰金などが支給されます。

これらの制度は、アスベストによる健康被害という重い負担を、社会全体で支えていこうという考えに基づいています。心当たりのある方は、諦めずに労働基準監督署や環境再生保全機構(ERCA)に相談することが重要です。

アスベストの禁止時期に関するよくあるご質問(FAQ)

アスベストの禁止時期に関するよくあるご質問(FAQ)

ここでは、アスベストの禁止時期や調査に関して、建物の所有者や管理者の方からよく寄せられる質問にお答えします。

1980年代に建てた木造住宅ですが、アスベストは使われていますか?

可能性はゼロではありません。1980年代はアスベスト含有建材が広く使われていた時期です。特に、屋根材の化粧スレート(コロニアルなど)や、お風呂場の壁、天井のボードなどに使用されている可能性があります。ただし、すべての建物で使われているわけではありません。正確な判断のためには、専門家による調査をお勧めします。

2006年以降の建物なら、絶対に安全と考えて良いですか?

2006年9月1日以降に着工した建物であれば、アスベスト含有建材が使用されている可能性は極めて低く、原則として安全と考えてよいでしょう。ただし、ごく稀に、規制前に製造された建材の在庫が使用されたケースも報告されています。法的には、2006年9月1日以降の着工が確認できれば事前調査は不要とされていますが、100%の確証を得たい場合は専門家に相談するのが確実です。

事前調査でアスベストが見つかったら、すぐに除去しないといけませんか?

必ずしもすぐに除去が必要なわけではありません。アスベストは、建材が損傷したり劣化したりして、繊維が飛散しない限りは、直ちに健康リスクを生じさせるわけではありません。そのため、建材の状態が良好であれば、そのまま管理を続ける「現状維持」という選択肢もあります。ただし、将来的に解体や大規模な改修を行う際には、除去が必要になります。専門家と相談し、建物の状況や将来計画に合わせた最適な対策を選択することが重要です。

まとめ:建物の年代を確認し、法改正に対応した適切な調査を

本記事では、アスベストがいつから禁止されたかという疑問を起点に、その複雑な規制の歴史、建物のリスク判断、そして現在所有者が遵守すべき法的な義務までを網羅的に解説しました。重要なポイントを改めて整理します。

  • アスベストは2006年に原則禁止2012年に全面禁止となりました。
  • 特に2006年以前に建てられた建物は、アスベスト含有のリスクを念頭に置く必要があります。
  • 2022年4月から事前調査が義務化され、2023年10月からは有資格者による調査が必須となっています。

建物の所有者・管理者にとって、アスベスト問題はもはや過去のものではありません。法改正により、今まさに対応が求められる課題です。まずはご自身の建物の建築年代を確認し、解体や改修の計画がある場合は、必ず法に則った有資格者による事前調査を実施してください。それが、建物の安全性を確保し、ご自身の法的責任を果たすための、確実で唯一の方法です。

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ライター情報

アスベストバスターズ編集部は、アスベスト調査・除去に関する専門的知識を提供する編集チームです。
読者が直面するかもしれない問題に対処し、安全な作業環境を保証するための実用的なアドバイスと正確な情報を提供することを使命としています。アスベストバスターズ編集部は、アスベスト関連の最新情報を分かりやすく解説し、読者に信頼される情報源であり続けることを目指しています。

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