アスベスト含有モルタルの全知識:調査・除去の法規制から費用まで専門家が解説

この記事の要点

  • モルタル自体にアスベストは含まれませんが、1960年代から2005年頃まで、耐火性やひび割れ防止の目的でアスベスト含有の混和材が使用されたことがあります。
  • 特にリスクが高いのは、耐火モルタル、断熱モルタル、古い下地調整材や仕上げ塗材、防水・補修材です。これらは通常「レベル3建材」に分類されます。
  • 2023年10月以降、アスベスト調査は有資格者(建築物石綿含有建材調査者など)による実施が義務化されています。自己判断は絶対に避けてください。
  • 調査から除去、処分までには、書面・目視調査、分析、飛散防止対策(湿潤化など)、特別管理産業廃棄物としての適正処理といった厳格な手順が定められています。
  • 費用は調査・除去の規模により変動しますが、国や自治体の補助金制度を活用できる場合があります。信頼できる専門業者選びが最も重要です。
目次

モルタルにアスベストは含まれる?基本知識とコンクリートとの違い

「うちの現場のモルタル壁、アスベストは大丈夫だろうか?」建設やリフォーム、解体工事に携わる方であれば、一度はこのような懸念を抱いたことがあるかもしれません。結論から言うと、モルタルそのものにアスベスト(石綿)は含まれていませんが、特定の目的で添加された「混和材」にアスベストが使用されていた可能性があります。

特に、建物の耐火性や耐久性を高める目的で、1960年代から2005年頃までに施工されたモルタルには注意が必要です。アスベストは安価で優れた性能を持つため、ひび割れ防止や作業性向上のために、モルタルに混ぜ込む建材として流通していました。この事実を知らずに解体や改修工事を進めてしまうと、アスベスト繊維を飛散させ、作業員や近隣住民に深刻な健康被害を及ぼすだけでなく、大気汚染防止法や石綿障害予防規則(石綿則)に違反し、厳しい罰則の対象となる可能性があります。

したがって、古い建物の工事に携わる事業者にとって、モルタルとアスベストの関係を正しく理解し、適切な手順を踏むことは、安全管理と法令遵守の観点から極めて重要です。まずは、混同されがちなモルタル、セメント、コンクリートの基本的な違いから確認していきましょう。

モルタルとは?セメント・コンクリートとの構成の違い

現場で日常的に扱うこれらの材料ですが、その構成要素を正確に理解しておくことが、アスベスト含有リスクを判断する第一歩となります。それぞれの主な構成は以下の通りです。

  • セメント:石灰石や粘土などを焼いて粉末にしたもので、水と反応して硬化する「接着剤」の役割を果たします。セメント単体で構造物を作ることはありません。
  • モルタル:セメントに「砂(細骨材)」と水を練り混ぜたものです。コンクリートほどの強度はありませんが、塗り壁の下地調整、レンガやブロックの目地、タイルの接着剤など、仕上げや接着の用途で幅広く使用されます。
  • コンクリート:セメントに「砂(細骨材)」と「砂利(粗骨材)」、そして水を練り混ぜたものです。砂利が入ることで強度が増し、建物の基礎や柱、梁といった構造躯体に使用されます。

ポイントは、一般的なコンクリートの構造躯体そのものには、アスベストが含まれる可能性は極めて低いということです。アスベスト含有が問題となるのは、主に性能向上のために特殊な添加物が加えられた「モルタル」や、コンクリート表面に塗られた「仕上げ塗材」などです。

なぜモルタルにアスベストが使用されたのか?歴史的背景と目的

では、なぜモルタルにアスベストが混ぜられたのでしょうか。その背景には、高度経済成長期の建設ラッシュと、アスベストが持つ「奇跡の鉱物」とまで呼ばれた特性があります。

主な使用目的は以下の通りです。

  • 耐火性・断熱性の向上:アスベストは熱に非常に強く燃えにくいため、ボイラー室の壁や煙突の内側などに使われる耐火モルタルに添加されました。
  • ひび割れ防止:モルタルが乾燥・硬化する際の収縮によるひび割れ(クラック)を防ぐため、繊維状のアスベストが補強材として混入されました。
  • 作業性の改善(増粘・保水):アスベストを混ぜることでモルタルの粘性が増し、壁に塗りやすくなる(ダレにくくなる)効果がありました。

これらの目的から、特に1960年代から1980年代にかけて多用されましたが、健康被害の深刻さが明らかになるにつれて規制が強化され、2006年にはアスベストの製造・使用等が全面的に禁止されました。

【要注意】アスベスト含有リスクが高いモルタルの種類と特徴

すべての古いモルタルにアスベストが含まれているわけではありません。しかし、特定の用途や種類においては、含有リスクが格段に高まるため、現場監督や施工管理者として特に注意を払う必要があります。アスベスト含有の有無は目視では絶対に判断できませんが、どの部分にリスクが潜んでいるかを事前に把握しておくことは、適切な調査計画を立てる上で不可欠です。ここでは、特に警戒すべきモルタルの種類とその特徴、そして法的なリスクレベルについて具体的に解説します。これらの知識は、顧客への説明責任を果たす上でも、作業員の安全を確保する上でも、あなたの専門性を証明するものとなるでしょう。

アスベスト含有モルタルの主な種類

アスベストが混和材として使用されたモルタルは、その用途によっていくつかの種類に分類されます。解体や改修の対象となる建物で、以下のモルタルが使用されている可能性がある場合は、専門家による調査を強く推奨します。

耐火モルタル・断熱モルタル

これらは最も注意が必要な種類の一つです。ボイラー室、焼却炉、煙突の内部など、高温にさらされる箇所の保護材として使用されました。アスベストの優れた耐火性能を直接利用したものであり、含有率が比較的高くなる傾向があります。古い工場やビルの機械室、暖房設備周りの壁や床を改修する際には、最優先で調査対象とすべき箇所です。

下地調整材・仕上げ塗材

外壁や内壁の仕上げに使われる材料も、リスクが高い代表例です。具体的には、壁の凹凸を平滑にするための「下地調整塗材」や、意匠性を高めるための「仕上げ塗材(リシン、スタッコ、吹付タイルなど)」に、ひび割れ防止や増粘の目的でアスベストが混入されていました。特に1970年代から1990年代にかけて施工された外壁の改修工事では、広範囲にわたって注意が必要です。

防水モルタル・ひび割れ補修材

建物の防水性能を高めるために、地下室の壁や屋上、バルコニーなどで使用される防水モルタルにもアスベストが含まれていることがあります。また、既存のコンクリートやモルタルのひび割れを補修するために使用された補修材(リペアモルタル)にも、強度向上や亀裂抑制のためにアスベストが添加されていた事例が報告されています。

アスベスト含有モルタルのリスクレベルとは?「レベル3建材」の扱い

アスベスト建材は、その飛散性の高さに応じて「レベル1」から「レベル3」までに分類されます。アスベスト含有モルタルや仕上げ塗材は、通常の状態ではアスベストがセメントなどで固められており、繊維が飛散しにくいため「レベル3建材(非飛散性アスベスト含有建材)」に分類されます。

しかし、「レベル3だから安全」と考えるのは大きな間違いです。グラインダーでの研磨、ドリルでの穿孔、ハンマーでの破砕など、解体・改修工事における作業では、固められた建材が破壊され、内部のアスベスト繊維が空気中に飛散するリスクが十分にあります。一度飛散したアスベストは長時間空気中を浮遊し、吸い込むと深刻な健康被害を引き起こします。そのため、レベル3建材であっても、除去作業時には湿潤化などの飛散防止措置や、作業員の適切な保護具着用が法律で厳しく義務付けられています。

【実務フロー】アスベスト含有モルタルの調査から除去・処分までの全手順

【実務フロー】アスベスト含有モルタルの調査から除去・処分までの全手順

アスベスト含有モルタルの疑いがある場合、法令を遵守し、安全を確保するためには、定められた手順に沿って慎重に対応を進める必要があります。自己判断や手順の省略は、重大な法的違反や健康被害に直結します。ここでは、建設・リフォーム業者の実務担当者が把握しておくべき、事前調査から最終的な処分までの具体的な流れを4つのステップに分けて解説します。このフローを理解し、適切に管理することが、元請事業者としての責任を果たす上で不可欠です。

ステップ1:事前調査の進め方

すべての工事の起点となるのが事前調査です。2022年4月から、建物の解体・改修工事を行う際には、規模の大小にかかわらずアスベストの事前調査結果を都道府県等へ報告することが義務化されました。さらに、2023年10月1日からは、建築物のアスベスト調査は厚生労働大臣が定める講習を修了した者(建築物石綿含有建材調査者など)が行う必要があります。

設計図書・施工記録による書面調査

まず最初に行うのが、設計図書、仕様書、施工記録などの書類を確認する書面調査です。建材の製品名や品番、製造年月日が記載されていれば、メーカーの公表情報や国土交通省のデータベースと照合し、アスベスト含有の有無を判断できる場合があります。古い建物で図面が残っていないケースも多いですが、可能な限り情報を集めることが重要です。

現地での目視調査と注意点

次に、有資格者が現地で建材の状態を確認します。書面調査で特定した箇所や、アスベスト含有が疑われる建材(前述の耐火モルタルなど)を直接見て、種類や使用状況を把握します。ただし、繰り返しになりますが、アスベストの有無は目視では絶対に確定できません。目視調査は、次の分析調査のために試料を採取すべき箇所を特定するための重要な工程です。

ステップ2:試料採取(サンプリング)と分析調査

書面調査と目視調査でアスベスト含有の有無が判断できない場合、または含有の疑いが強い場合には、建材の一部を採取(サンプリング)し、専門の分析機関で調査を行う必要があります。

専門業者による適切なサンプリング方法

サンプリングは、アスベスト繊維を飛散させないよう、細心の注意を払って行う必要があります。作業箇所を隔離養生し、湿潤化させてから手作業で慎重に試料を採取します。採取した試料は、密閉できる容器や袋に二重に入れ、飛散しないように管理します。この作業は専門的な知識と技術を要するため、必ずアスベスト調査の専門業者に依頼してください。DIYでのサンプリングは非常に危険であり、絶対に行ってはいけません。

主な分析方法(X線回折法・DTG法など)の概要

採取された試料は、分析機関で含有の有無と種類を特定します。主な分析方法には、JIS A 1481-1で定められている「X線回折分析法」や「位相差・分散顕微鏡法」があります。これにより、クリソタイル、アモサイト、クロシドライトなど6種類のアスベストが0.1重量%を超えて含まれているかを判定します。特にモルタル混和材の分析では、他の鉱物との判別が難しい場合があり、DTG法(示差熱熱重量同時測定法)などの高度な手法が用いられることもあります。

ステップ3:除去・封じ込め・囲い込み工事の計画と実施

分析の結果、アスベスト含有が確認された場合、除去、封じ込め、囲い込みのいずれかの方法で対策工事を行います。解体工事の場合は除去が基本となりますが、改修工事では建物の状況に応じて最適な工法を選択します。

飛散防止対策の徹底(湿潤化・養生など)

レベル3建材の除去作業で最も重要なのが、粉じんの飛散防止です。作業前には、除去対象のモルタルに水や飛散防止剤を散布して十分に湿潤化させます。作業区域はプラスチックシートなどで隔離養生し、周辺へのアスベスト繊維の拡散を防ぎます。また、高性能真空掃除機(HEPAフィルター付き)を使用して、発生した粉じんを速やかに吸引・回収することも徹底します。

作業員の保護具と安全管理

作業員の安全確保も最優先事項です。作業員は、使い捨ての防護服、保護メガネ、そして呼吸用保護具(防じんマスク)を必ず着用しなければなりません。特にマスクは、アスベストの粒子を捕集できる性能を持つ、取替え式のRS3またはRL3クラス、あるいは同等以上のものを使用することが法律で定められています。作業後には、保護具に付着した粉じんを適切に処理するための手順も厳守します。

ステップ4:特別管理産業廃棄物としての適正な処理・処分

除去したアスベスト含有モルタルは、通常の建設廃棄物とは異なり、「特別管理産業廃棄物」として法律に基づき適正に処理しなければなりません。まず、除去した廃棄物は、飛散しないように湿潤化し、耐水性のプラスチック袋で二重に梱包します。袋にはアスベスト含有廃棄物であることを示す表示を明確に行います。その後、都道府県知事等の許可を受けた特別管理産業廃棄物収集運搬業者に委託し、許可を持つ中間処理施設または最終処分場まで運搬します。この際、排出事業者はマニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付し、廃棄物が最終処分されるまでの一連の流れを正確に管理する義務を負います。

費用はいくらかかる?調査・除去費用の目安と補助金制度

アスベスト対策を検討する上で、事業者や施主にとって最も気になるのが費用です。アスベストの調査から除去、処分までには専門的な作業が必要となるため、相応のコストが発生します。しかし、その費用を惜しんで対策を怠れば、将来的にさらに大きな法的リスクや賠償責任を負うことになりかねません。ここでは、費用の内訳と相場を解説するとともに、負担を軽減するために活用できる補助金制度についても触れます。正確な費用感を把握し、顧客への適切な見積もり提示や資金計画に役立ててください。

アスベスト調査・分析にかかる費用の内訳と相場

アスベスト調査の費用は、主に「書面・現地調査費用」と「分析費用」で構成されます。

  • 書面・現地調査費用:有資格者が図面を確認し、現地で目視調査を行う費用です。建物の規模や構造によりますが、一般的な戸建て住宅で3万円~10万円程度が目安です。
  • 分析費用:採取した試料を分析機関で調べる費用です。1検体あたり3万円~5万円が相場です。調査箇所(検体数)が増えれば、その分費用も加算されます。

したがって、調査全体の費用は、建物の規模や調査範囲によって大きく変動しますが、数検体の分析を含めて10万円~20万円程度になるケースが多く見られます。

アスベストバスターズでは、調査料金を「採取箇所数」と「採取場所」に応じて明確に設定しています。詳細は、下記の料金ページをご覧ください。
→ アスベスト調査の料金はこちら

モルタル除去・処分費用の単価と変動要因

アスベスト含有モルタル(レベル3建材)の除去・処分費用は、施工面積(㎡)あたりの単価で算出されるのが一般的です。

除去費用の単価目安は、1㎡あたり2,000円~8,500円程度です。この費用には、養生、湿潤化、除去作業、廃棄物梱包などの作業費が含まれます。

費用が変動する主な要因としては、以下のような点が挙げられます。

  • 作業場所:足場の設置が必要な高所や、作業スペースが狭い場所は費用が高くなります。
  • 除去面積:面積が広いほどスケールメリットが働き、㎡単価は安くなる傾向があります。
  • 廃棄物処理費:処分場の受け入れ費用や運搬距離によって変動します。

正確な費用は、必ず複数の専門業者から見積もりを取り、内訳を比較検討することが重要です。

活用できる国や自治体の補助金・助成金制度

アスベスト対策の促進のため、国や地方自治体は補助金・助成金制度を設けています。民間建築物を対象に、アスベストの分析調査費用や除去等工事費用の一部を補助するものが中心です。例えば、分析調査費用の全額(上限あり)、除去費用の2/3以内といった補助が受けられる場合があります。ただし、制度の有無、対象となる建築物、補助率、申請期間などは自治体によって大きく異なります。工事を計画する際は、必ず対象となる建物の所在地を管轄する市区町村のウェブサイトを確認するか、建築指導課などの担当部署に問い合わせてみましょう。

信頼できる専門業者の選び方と連携のポイント

アスベスト対策の成否は、連携する専門業者の質に大きく左右されます。不適切な業者を選んでしまうと、不完全な調査やずさんな除去工事によりアスベストを飛散させてしまったり、法的な手続きに不備が生じたりと、元請事業者として重大な責任問題に発展しかねません。ここでは、安心して業務を任せられる信頼性の高い専門業者を見極めるための具体的なチェックポイントを解説します。これらのポイントを押さえ、適切なパートナーと連携することが、リスク管理の鍵となります。

確認すべき資格と許認可

まず、業者が法的に要求される資格や許認可を保有しているかを確認することが絶対条件です。

  • 建築物石綿含有建材調査者:2023年10月以降、調査を行うために必須の資格です。
  • 石綿作業主任者:除去作業現場に必ず配置しなければならない国家資格です。
  • 建設業許可、解体工事業登録:工事の種類や規模に応じた許可・登録が必要です。
  • 産業廃棄物収集運搬業許可(特別管理):アスベスト廃棄物を運搬するために必要な許可です。

これらの資格者証や許可証の提示を求め、必ず確認しましょう。

見積書のチェックポイントと透明性の重要性

複数の業者から見積もりを取り、その内容を精査することが重要です。信頼できる業者の見積書は、項目が詳細で透明性が高いのが特徴です。「一式」といった曖昧な記載が多い場合は注意が必要です。以下の点が明確に記載されているかを確認しましょう。

  • 調査、除去、養生、廃棄物処理など、工程ごとの費用内訳
  • 使用する機材や保護具の種類
  • 作業員の人数と人工(にんく)
  • 飛散防止対策の具体的な内容

極端に安価な見積もりは、必要な安全対策を省略している可能性があるため、安易に選ばないようにしましょう。

過去の実績と安全管理体制の確認方法

業者のウェブサイトや会社案内で、過去にどのようなアスベスト除去工事を手がけてきたか、その実績を確認しましょう。特に、今回と同様のモルタル除去工事の実績が豊富であれば、より安心して任せられます。また、安全管理体制について具体的に質問することも有効です。「どのような安全教育を行っていますか?」「万が一の事故に備えた保険には加入していますか?」といった質問に対し、明確で納得のいく回答が得られるかどうかが、信頼性を測る一つの指標となります。

アスベスト含有モルタルに関するよくあるご質問(FAQ)

アスベスト含有モルタルに関するよくあるご質問(FAQ)

2006年以降に建てられた建物なら、モルタルにアスベストの心配はありませんか?

はい、2006年9月1日以降に着工した建築物については、アスベスト含有建材の使用が全面的に禁止されているため、原則としてアスベストが含まれている可能性は極めて低いです。ただし、それ以前に製造された建材の在庫が使用された可能性もゼロではないため、規制直後の建物で不安な場合は、念のため設計図書等で確認することをおすすめします。モルタル壁の一部を自分で少し削って、アスベストの有無を確認しても良いですか?

絶対にやめてください。アスベスト含有モルタルを削ったり、割ったりすると、目に見えないアスベスト繊維が空気中に飛散し、それを吸い込んでしまう危険性が非常に高いです。アスベストの有無の確認は、必ず専門の知識を持つ有資格者が、適切な飛散防止措置を講じた上で行わなければなりません。自己判断での確認作業は、ご自身だけでなく、ご家族や周囲の人々を危険に晒す行為です。レベル3建材のモルタルなら、除去工事の際に役所への届出は不要ですか?

レベル1(吹付け石綿等)やレベル2(保温材等)のような、大気汚染防止法に基づく特定粉じん排出等作業実施届出書の提出義務は、レベル3建材には原則としてありません。しかし、これは「何も届出が要らない」という意味ではありません。建設リサイクル法に基づく届出や、2022年4月から義務化された石綿事前調査結果報告システム(G-MIS)による電子報告は必要です。また、労働安全衛生法および石綿障害予防規則に基づく作業計画の策定や労働基準監督署への届出が必要な場合もあります。必要な手続きは工事の状況によって異なるため、必ず専門業者や管轄の行政機関に確認してください。アスベスト含有モルタルの上に塗装がされています。塗装ごと剥がせば安全ですか?

安全ではありません。塗装ごと剥がす作業(塗膜除去)においても、下地であるアスベスト含有モルタルを損傷させ、アスベスト繊維を飛散させるリスクが伴います。特に電動工具を使用するケレン作業などは、高濃度の粉じんを発生させる可能性があります。したがって、塗装がされていても、下地にアスベスト含有建材がある場合は、通常のレベル3建材除去作業と同様の厳重な飛散防止対策と作業員の保護が法律で義務付けられています。

まとめ:法令遵守と適切な対応でアスベストリスクを管理する

本記事では、建設・リフォーム・解体事業者が直面する「アスベスト含有モルタル」の問題について、その基本知識から実務的な対応フロー、費用、業者選定までを網羅的に解説しました。重要なのは、アスベストのリスクは「正しく知って、正しく対処すれば管理可能」であるということです。自己判断や安易なコスト削減は、作業員や社会全体を危険に晒し、企業の信頼を失墜させる行為に他なりません。2023年10月からの調査者資格の義務化など、法規制は年々厳格化しています。最新の法令を遵守し、信頼できる専門家と連携して、安全かつ適正なアスベスト対策を徹底することが、事業者としての社会的責任を果たす上で不可欠です。

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ライター情報

アスベストバスターズ編集部は、アスベスト調査・除去に関する専門的知識を提供する編集チームです。
読者が直面するかもしれない問題に対処し、安全な作業環境を保証するための実用的なアドバイスと正確な情報を提供することを使命としています。アスベストバスターズ編集部は、アスベスト関連の最新情報を分かりやすく解説し、読者に信頼される情報源であり続けることを目指しています。

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