マンション(共同住宅)におけるアスベスト調査は、居住者の健康を守るうえで極めて重要です。過去に建築資材として広く使われたアスベスト(石綿)は、適切に管理されずに飛散すると深刻な健康被害を引き起こす恐れがあります。多数の居住者が生活するマンションでは、一箇所のアスベスト問題が建物全体に影響しうるため、安全管理の責任は一層重大です。管理組合や管理会社はもちろん、居住者一人ひとりもアスベストのリスクと調査の必要性を正しく理解することが求められます。この記事では、マンションにおけるアスベスト調査の重要性と具体的な実施方法について、専門的な視点から詳しく解説します。以下のポイントを順を追って説明し、不安や疑問に丁寧に答えていきます。
国土交通省も建物所有者や管理者に対し、できるだけ早い段階でアスベスト調査を行い、含有建材の有無や状態を把握するよう勧めています。法令遵守と居住者の健康確保のため、マンションでは計画的なアスベスト調査が不可欠です。本記事を通じて、マンション管理に携わる皆様や居住者の方々が適切な知識を身につけ、安全・安心な住環境づくりに役立てていただければ幸いです。
マンションにもアスベストは使用されている?
「マンションだからアスベストの心配はない」ということはありません。特に1970〜80年代に建てられたマンションでは、アスベストを含む建材が使用されている可能性が高いことが知られています。当時、アスベストは耐火性・断熱性に優れた“万能素材”として評価され、戸建てのみならず集合住宅でも広く使われていました。例えば地下駐車場や機械室の天井・梁への吹き付け材(耐火被覆材)にはアスベストが含まれているケースがあります。また、共用廊下やエントランスの天井板、各住戸の壁材・床材、配管の保温材など、建物の様々な部位に石綿含有建材が用いられていました。こうした建材は通常は固化しており直ちに危険をもたらすわけではありませんが、老朽化や工事の際に破損すると微細な石綿繊維が空気中に飛散し健康リスクを高めます。
実際、1960年代から1980年代半ばに建てられた建物は天井や壁、床、配管周りまでアスベストが使われていた可能性があり、国もこの時期の建築物を「リスクの高い年代」と位置付けています。とりわけ1970年代のマンションでは、吹き付けアスベストの使用が確認されており、放置すれば繊維飛散の恐れがあることが報告されています。したがって、「マンションだから安全」という油断は禁物です。ご自身のマンションが古い年代に建てられた場合や使用建材に不明な点がある場合は、早めに専門調査を行って状況を把握しておくことが重要です。
なお2006年以降に着工された建物ではアスベスト使用が全面禁止となっていますが、それ以前の建物では在庫建材としてアスベスト含有資材が引き続き使われた例もあり、注意が必要です。マンションも例外ではなく、年代によってはアスベストリスクを内包している可能性があることを認識しておきましょう。
共用部と専有部、それぞれの調査責任
マンションのアスベスト調査においては、共用部分と専有部分で責任主体や進め方が異なります。共用部と専有部の区分に応じて、誰が調査を実施し費用を負担すべきかを明確に理解しておく必要があります。
共用部分の調査責任
廊下・エントランス・階段室・外壁・屋上・構造体など、マンションの共用部に関するアスベスト調査は、原則として管理組合(または委託を受けた管理会社)が主体となって行います。共用部でアスベスト含有が疑われる箇所がある場合、管理組合が専門業者に調査を依頼し、その費用は管理費や修繕積立金から支出されるのが通例です。実際、マンション全体の大規模修繕時などに建物全体のアスベスト調査を行う場合、積立金で賄われるケースが多く見られます。共用部分は不特定多数の居住者が利用する空間であり、そこでのアスベスト対策は管理組合に法的・道義的な責務があります。調査の計画段階では理事会で協議し、総会や回覧などを通じて居住者全員に説明・承認を得て進めることが望ましいでしょう。
専有部分の調査責任
各戸の室内(専有部)に関しては、基本的にその住戸の所有者(区分所有者)が調査の責任を負います。例えば、住戸内でリフォーム工事(キッチンや浴室の改装、天井の張替え等)を行う際、工事箇所にアスベスト含有建材が使われていないか事前に確認する義務は施主である所有者側にあります。専有部分の調査費用も原則としてその所有者が負担するのが一般的です。マンションによっては管理規約で、リフォーム申請時にアスベスト非含有の証明提出を求めたり、必要に応じて調査結果を管理組合に報告するルールを定めている場合もあります。いずれにせよ、専有部内であっても工事による石綿飛散は隣接住戸や共用部に影響を与えかねないため、所有者は適切な調査と安全措置を講じる責任があります。
調査結果の共有と周知義務
共用部・専有部いずれの調査であっても、その結果は管理組合と居住者全体で適切に共有することが望ましいです。特に共用部分について管理組合が実施したアスベスト調査結果は、速やかに全住民に周知すべき重要情報です。アスベストが検出された場合はもちろん、含有が確認されなかった場合でも記録として保管し、希望者には開示できるようにしておくと良いでしょう。過去の調査履歴や分析報告書はマンションの「健康診断結果」と言えます。これらは長期修繕計画の立案や、不動産取引時の資料としても活用されるため、管理組合が中心となって適切に保管・管理してください。また、調査計画の情報共有も大切です。もし個別の区分所有者が専有部リフォームのため調査を検討している場合、管理組合に問い合わせて共用部の調査予定を確認することが推奨されます。例えば「ちょうど来年度に管理組合が建物全体のアスベスト事前調査を計画していた」という場合、タイミングを合わせて共同で依頼すれば、個別に業者を手配するより費用や手間を抑えられる可能性があります。逆に情報共有を怠ると、既に実施済みの調査を重複して行ってしまったり、余計な出費を招くリスクがあります。調査結果と予定をオープンにし、管理組合と区分所有者・居住者が連携して対応することが、マンション全体の安全対策を効率的かつ経済的に進めるカギとなります。
マンションで調査が必要となるケース
どのような場合にマンションでアスベスト調査が必要になるのか、具体的なケースを把握しておきましょう。現在の法令では、建築物の解体や改修工事を行う前には事前にアスベストの有無について調査を実施することが義務付けられています。マンションにおいて調査が求められる主な場面として、以下のようなケースが挙げられます。

大規模修繕や構造改修工事
マンション全体の大規模修繕工事(外壁の塗装更新、屋上防水工事、廊下やバルコニーの改修など)や耐震補強工事を実施する際には、工事対象箇所にアスベスト含有建材が使われていないか事前調査が必要です。とくに、天井裏の耐火被覆材や配管の断熱材、外壁仕上げ材など、修繕工事で手を加える部分に石綿含有の疑いがあれば必ず専門調査を行います。マンションは戸建てに比べ共用部位が広範囲に及ぶため、調査箇所も多岐にわたります。大規模修繕工事では請負金額が一定以上の場合に事前調査結果の行政報告が義務化されており、調査漏れは許されません。管理組合として計画段階からアスベスト調査を組み込んでおくことが不可欠です。
共用設備の更新工事
老朽化したエレベーターや給排水管、空調設備、ボイラー設備等の共用設備を更新・撤去する工事も、アスベスト調査が必要となる代表的なケースです。機械室や配管シャフト内の断熱材・耐火材、天井裏や床下の配線被覆材など、設備更新に伴い露出・切断される部材にアスベスト含有の可能性があれば、事前に確認しなければなりません。例えば地下の機械室に古いボイラー断熱材(耐火被覆)として石綿が使われていた、配管継手部に石綿シートが巻かれていた、といった事例もあります。設備更新工事は建物全体の安全性向上に直結する重要工事ですが、同時にアスベスト飛散のリスクを伴う可能性があるため、着工前の調査と適切な除去・養生対策が求められます。
2026年1月より、ボイラーなどの工作物の事前調査には「工作物石綿事前調査者」が必要となります。詳しくはこちらの記事(アスベスト調査に必要な資格一覧|建築物・工作物の事前調査は誰ができるのか(2026年1月の工作物義務化も合わせて解説))をご参照ください。
専有部(各住戸内)のリフォーム
個別の住戸でキッチン・浴室などの水回り改装、内装リフォーム、間取り変更、配管交換といった工事を行う場合も、事前のアスベスト調査が必要です。特に築年数が古いマンションでは、室内の天井板や壁のボード、床材(クッションフロアや9インチタイルなど)の下地、接着剤に至るまでアスベストが含まれていたケースがあります。例えば浴室リフォームでユニットバスを解体する際、周囲の断熱材やモルタルにアスベストが含まれていないか確認する、といったことが挙げられます。リフォーム工事は専有部内とはいえ、適切な調査と対策なく石綿を飛散させてしまえば、自室のみならず隣接住戸や共有配管を通じた全体に影響を及ぼしかねません。区分所有者が自己責任で対応すべき範疇ですが、管理組合もリフォーム申請時のチェック体制等で適切に関与することが望ましいでしょう。
小規模な修繕や部分的な工事でも注意
壁に穴を開ける、配管の一部を交換する、床の一部を張り替える…といった小規模工事であっても、施工箇所に石綿含有建材が使われていれば注意が必要です。一見頑丈に見える石綿含有建材(成形板やスレート瓦等、いわゆるレベル2・レベル3建材)でも、切断・穿孔・破砕すれば繊維が飛散するリスクがあります。例えば石綿含有のケイ酸カルシウム板の壁に配管穴を開ける作業、石綿入りクッションフロアを一部剥がして張替える作業など、施工規模が小さくても適切な防塵マスクや養生無しに行えば被曝リスクがあります。「少しの工事だから大丈夫」と油断せず、疑わしい場合は必ず事前に調査を行うことが肝心です。2023年10月以降、一定規模の改修・解体工事では石綿調査資格者による事前調査が法令で義務化され、結果の行政報告も必要となりました。小規模工事であっても業者任せにせず、必要に応じて調査を依頼しましょう。
以上のように、マンションでは解体・改修に関わるあらゆる場面でアスベスト調査が求められます。万一、事前調査を怠ったまま工事を行い石綿を飛散させてしまった場合、居住者の健康被害のみならず法令違反による罰則(大気汚染防止法や労働安全衛生法に基づく罰金・懲役)を受ける可能性もあります。そうならないためにも、「工事前のアスベスト調査は当然に行うべきもの」という意識を全員で共有しておきましょう。
マンションでの調査実施時のポイント
実際にマンションでアスベスト調査を行う際には、調査の進め方や周辺への配慮についていくつか留意すべきポイントがあります。共用部の調査と専有部(室内)の調査では状況が異なりますが、いずれの場合も安全確保と居住者への配慮が最優先です。それぞれのケースに即して、実務上の注意点を確認しておきましょう。

共用部分で調査を行う場合
管理組合が主導する共用部のアスベスト調査では、事前周知とスケジュール調整が鍵となります。調査員が建物内の様々な箇所に立ち入って目視確認やサンプリングを行いますので、居住者に向けて「何月何日にどの共用部で調査を実施する」といった通知を出し、協力を仰ぎます。エレベーターホールや廊下など居住者の往来がある場所を調査する際は、安全確保のため一時的に立ち入り制限を設ける場合もあります。そのため、調査日時はできるだけ人通りの少ない時間帯を選ぶ、複数日に分散して実施するなどの工夫が望ましいでしょう。調査箇所によっては軽微な騒音(天井板の一部取り外し等)や粉じんが発生する可能性もあるため、防音・防塵シートの設置や作業音に配慮した時間設定を行います。また、調査員が防護マスクや防護服を着用して作業する場合、その姿を見た居住者が不安に感じることもありえます。事前説明で「安全のための措置であり、適切に管理して実施する」旨を伝えておくと良いでしょう。共用部調査では管理会社の担当者が立ち会い、調査範囲を案内するとともに居住者対応に当たるケースもあります。空調・換気設備の停止も重要なポイントです。調査中に万一微細な粉じんが発生した場合、空調ダクトを通じて広がるのを防ぐため、該当エリアの空調・換気扇を止めて負圧除塵機を使用するなど、飛散防止措置を講じながら作業します。調査終了後は速やかに清掃・集じんを行い、通常どおり利用できる状態に復旧します。
専有部分で調査を行う場合
各住戸内でアスベスト調査を実施する際は、所有者(居住者)との綿密な打ち合わせが欠かせません。調査員が室内に立ち入る日時を調整し、在宅か外出か、家具・荷物の養生はどうするか、といった細部まで事前に取り決めます。例えば天井や壁のサンプル採取を行う場合、直下の家具や床をビニールシートで覆って保護する、キッチン周りを調査するなら食器類を片付けてもらう、といった事前準備が必要です。調査箇所によっては石膏ボードやタイルを一部切り出すため、わずかながら粉塵が出る可能性があります。そのため、調査当日は調査員が到着する前に該当部屋のエアコン・換気扇を停止しておいてもらう、ペットや小さなお子様がいる場合は念のため別室で待機してもらうか一時的に外出いただく、といった配慮も検討します。調査そのものは通常1〜2時間程度で完了し、大がかりな工事とは異なり騒音も最小限ですが、「何をするのか」「どのくらい時間がかかるのか」を事前によく説明し、居住者の不安を取り除くことが大切です。特にマンションの場合、専有部内で予期せぬ事態(例えば調査中に思わぬ箇所が破損した等)が起きるとトラブルに発展しかねません。信頼できる有資格の専門業者に依頼し、丁寧にコミュニケーションを図りながら進めることで、居住者の協力も得やすくなります。
共通の安全対策と住民説明
共用部・専有部いずれの調査においても、安全対策と事前の住民説明が共通して重要となります。安全対策としては、調査員の個人防護具着用や飛散防止のための養生措置は当然として、必要最小限のサンプリングで済むよう書面調査(図面・記録の事前確認)を徹底したり、サンプル採取箇所以外の部分は極力傷めないよう慎重に作業するといった配慮も求められます。また、採取後の穴や剥がした部分がある場合はきちんと補修し、石綿含有の有無に関わらず原状回復に努めます。住民説明については、「なぜ調査が必要なのか」「調査で何をするのか」「安全に実施するための対策は何か」を事前に知らせておくことが肝心です。マンション掲示板への告知や回覧での説明文配布、必要に応じて調査会社の協力を得て住民向け説明会を開催するのも良いでしょう。専門的な調査と聞くと身構える方もいますが、ポイントを押さえて平易に説明し、「調査を受けることでむしろ安心につながる」ことを理解してもらうことが大切です。実際、厚生労働省や環境省も分析調査は信頼性の高いリスク回避手段として推奨しており、古い建物ほど専門業者による正確な調査が不可欠だとされています。事前説明と安全管理を徹底したうえで調査を実施すれば、居住者の不安も和らぎ、円滑な協力体制のもとで調査を進めることができます。
なお、こうしたマンションでのアスベスト事前調査は法律に定められた「石綿含有建材調査者」等の有資格者に依頼する必要があります。資格のない者による調査は法令違反となり、2023年以降直接罰則の対象ともなります。専門知識を持った調査会社に依頼し、調査〜分析〜報告書作成まで一貫して任せることで、法令遵守はもちろん精度の高い結果を得ることができます。
アスベストバスターズでは、アスベスト調査の専門会社として資格保有スタッフが全国対応で現地調査に伺い、疑わしい建材から適切にサンプルを採取・分析して詳細な報告書を提供しています。土日対応や迅速な見積りにも定評があり、必要に応じて即日での調査開始も可能な体制を整えているため、マンションの調査でも安心して任せることができます。調査実施にあたって不明点があれば、まずは専門業者に相談し、具体的な進め方や費用見積もりについて説明を受けるとよいでしょう(アスベストバスターズへのお問い合わせは24時間WEBフォームで受け付けています)。
アスベスト発見時の対応(管理組合の役割)
万一、マンション内の調査でアスベストが検出された場合、管理組合および管理会社は迅速かつ適切に対応策を講じる必要があります。アスベストが存在すること自体は違法ではありませんが、放置すれば将来的に飛散しうる危険箇所を抱えることになります。居住者の安全と法令順守の観点から、「発見後どう対処するか」の計画を早急に立てることが求められます。以下に管理組合が中心となって行うべき主な対応策を示します。
除去または封じ込めの計画立案
調査の結果、例えば地下駐車場天井に吹き付けアスベストが残存していることが判明した、といった場合には、まず除去工事の計画を検討します。石綿含有吹付け材については建築基準法上も増改築や大規模修繕時に除去が義務付けられており、既存部分について封じ込め・囲い込み措置が許容されるものの恒久的な解決策ではありません。したがって、危険性の高いレベル1建材(吹き付け材など)が露出・劣化している場合は、専門業者による除去工事を可能な限り早期に計画するのが望ましいでしょう。一方、レベル2・3の成形板などで比較的状態が安定しているものについては、直ちに除去せず封じ込め(特殊なコーティング剤を塗布して繊維を固定)や囲い込み(ボード等で密閉して飛散を防止)といった措置で当面のリスクを抑える方法もあります。いずれにせよ、管理組合は専門コンサルタントや除去業者と協議し、建材の種類・劣化状況に応じた最適な対処法を判断します。除去工事には石綿作業主任者や特別管理産業廃棄物の処理など法的手続きも伴うため、この段階から専門業者の知見を仰ぐことが重要です。
専門業者との連携と住民への説明
アスベスト除去・処理は高度な管理措置が求められるため、資格を持つ専門業者への依頼が不可欠です。管理組合は信頼できる業者を選定し、除去工事の具体的な工程や安全対策について説明を受けます。その上で、住民説明会を開催して計画を共有することが重要です。説明会では、発見されたアスベストの場所・量・状態、講じる対策(除去方法や封じ込め方法)、工事期間中の安全措置(養生範囲や陰圧隔離の方法、空気中濃度のモニタリング計画)、居住者への影響(騒音や振動の見込み、一時退去の必要性があるか否か)などを丁寧に説明します。また、住民からの質問や不安の声に専門家が直接回答する機会を設けることで、計画への理解と協力を得やすくなります。アスベストバスターズは調査だけでなく除去に関するアドバイスも行っており、除去業者のご紹介もさせていただきます。除去業者であれば、住民説明会への同行や資料作成をサポートしてくれる場合もあります。管理組合は主体者として、住民が安心して暮らせるよう情報提供と合意形成に努めましょう。
行政への報告・届出
アスベストが検出された場合、その後の除去等にあたって必要となる行政手続きにも留意が必要です。2021年の法改正以降、一定規模以上の除去工事を行う際には事前に都道府県等への計画届を提出し、作業完了後にも届出・報告が義務付けられています。また、作業現場の管轄労働基準監督署や環境部署とも連携し、法定手続を漏れなく実施することが求められます。管理組合として直接行政対応を行うケースは少ないかもしれませんが、選定した除去業者や管理会社と協力し、必要書類の準備や提出状況を把握しておきましょう。石綿飛散防止の観点から各自治体で独自の条例や報告制度がある場合もありますので、専門業者の指示を仰ぎながら適切に対応します。法令遵守はマンション全体の信頼維持にも繋がる大切なポイントです。
費用負担の整理(修繕積立金・補助金の活用など)
アスベストの除去・処分工事には相応の費用がかかります。その費用負担をどうするかも、管理組合の重要な検討事項です。共用部の問題であれば基本的には修繕積立金や管理費から捻出しますが、想定外の多額な費用となる場合は臨時の組合費徴収(いわゆる臨時拠出金)を議決する必要が出てくるかもしれません。長期修繕計画にアスベスト対応工事の項目がなかった場合でも、今後の計画見直しの中で位置付けていくことが望ましいでしょう。また、国や地方自治体には民間建築物に対するアスベスト対策工事への補助金制度が用意されている場合があります。国交省によれば、国が創設した補助制度に基づき各地方公共団体が窓口となって補助金を支給する仕組みがあり、石綿の有無を調査する段階から対象とする自治体もあるとのことです。除去工事そのものについても、自治体によっては費用の一部を補助してくれる制度があります。管理組合はこうした公的補助の情報を収集し、該当する場合は積極的に活用を検討しましょう。補助金申請には工事着手前に手続きを行う必要があるため、計画が固まり次第早めに自治体担当部署へ相談することが大切です。費用面の検討では、見積もりの複数社比較(相見積もり)も有効です。ただし金額だけでなく実績や信頼性を重視し、違法な安易工法で飛散事故を起こすような業者は排除するよう留意してください。最終的な費用負担案については総会決議事項となる場合もありますので、組合員への丁寧な説明と理解促進に努めます。
以上のように、アスベストが発見された際には管理組合が中心となって除去計画の策定から業者選定・住民説明・行政対応・費用手当まで包括的に対応する必要があります。対応にあたっては、引き続き専門家のサポートを得ることが賢明です。アスベスト問題は適切に処理すれば決して恐れるものではありませんが、放置すればマンション全体の資産価値や居住環境を損ねる重大事項です。健全なマンション運営のためにも、管理組合は率先してリーダーシップを発揮し、安全・安心な住環境の維持に努めましょう。
まとめ
マンションにおけるアスベスト調査の重要性と具体的な実施方法について、ポイントを総括します。
- マンションにも潜むアスベストリスク: 特に1970〜80年代築のマンションには吹き付け材やボード、床材など様々な部位でアスベスト含有建材が使われていた可能性があります。共同住宅だからといって安全とは限らず、古い建物ほど専門調査による確認が不可欠です。
- 共用部・専有部の役割分担: 共用部分の調査は管理組合(管理会社)が責任を持って行い、費用も修繕積立金等で負担するのが一般的です。専有部分のリフォームに伴う調査は各区分所有者が主体となり実施します。調査結果や計画は組合内で共有し、情報連携を図ることで重複調査や無駄なコストを防げます。
- 調査が必要なタイミング: 大規模修繕工事や共用設備更新工事、各住戸のリフォーム前には必ず事前にアスベスト調査を実施します。規模の大小に関わらず、石綿を含む恐れのある部分に手を加える際は専門業者による調査が法律上義務付けられており、怠ると罰則の可能性もあります。「工事前に調査」が鉄則です。
- 調査実施時のポイント: 調査時には事前周知やスケジュール調整、安全措置(養生・換気停止等)を徹底し、居住者の不安に配慮した説明を行います。調査は有資格者へ依頼し、書面調査→現地目視→必要箇所のサンプリング分析という適切な手順で進めます。調査会社によるワンストップの対応(分析結果に基づく報告書作成まで)を活用し、法令順守と精度確保に努めましょう。
- アスベスト検出時の対応: アスベストが見つかった場合、管理組合は専門業者と連携して除去または封じ込めの計画を策定し、住民説明会で周知徹底します。除去工事には行政への届出や厳格な安全管理が伴うため、信頼できる業者選定が重要です。費用は原則積立金から充当し、不足時は補助金制度の活用や臨時徴収も検討します。マンション全体の資産価値を維持するためにも、アスベスト問題は先送りせず計画的に解消していくことが望まれます。
最後に、居住者の健康と法令順守を両立させるには、早め早めの専門家への相談が何より有効です。マンション管理組合は「もしや石綿かも?」と思う箇所があれば、まず専門業者に調査の相談をすると良いでしょう。アスベストバスターズのようなアスベスト調査のプロフェッショナルであれば、最新の規制に精通した有資格者が迅速に現地調査に対応し、適切な分析と改善提案を行ってくれます。居住者の安心と建物の安全性を確保するため、疑わしい段階で遠慮なく専門サービスを活用してください。早期発見・早期対策こそが、将来のリスクとコストを最小限に抑える鍵です。管理組合と居住者が一丸となり、正しい知識に基づいて行動することで、マンションの快適で安全な暮らしが末永く守られることでしょう。
お問い合わせや調査のご依頼については、専門家によるサポートを提供するアスベストバスターズまでお気軽にご相談ください(24時間受付のWEBお問い合わせフォームをご利用いただけます)。専門チームが丁寧に対応し、マンションのアスベスト対策を力強くサポートいたします。