屋上・陸屋根の防水材とアスベスト|工法別の含有可能性と改修時の事前調査

屋上に手すりを1本立てる。フェンスを設置する。太陽光パネルの架台を固定する——こうした工事でも、アスベスト(石綿)の事前調査は必要です。

床や壁、屋根材のアスベストは広く知られるようになりました。一方で、屋上や陸屋根の「防水層」は、調査から抜け落ちやすい建材の代表格です。「屋根材は調べたが、屋上の防水までは見ていなかった」というご相談を、アスベストバスターズでは繰り返しお受けしています。

見落とされやすい理由は3つあります。防水層が押えコンクリートの下に隠れていて存在を意識しにくいこと。「防水材」とひと括りにされがちで、実際には複数の層で構成されていること。そして、「1987年以降ならアスベストは入っていない」という理解が、実際には不正確であることです。

本記事では、屋上・陸屋根の防水材について、工法別の含有可能性、築年による判定の考え方、そして改修時に必要となる事前調査の実務を整理します。年代の境界線は1本ではなく、4本あります。

屋上の工事に事前調査が必要かどうか、その場でお答えします。

調査費用の目安は料金ページをご覧ください。

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目次

1. 屋上・陸屋根の防水層も、アスベスト事前調査の対象になる

1-1.「切断・破砕を伴わない」工事でも、事前調査そのものは必要です

石綿障害予防規則(以下「石綿則」)第3条第1項は、事前調査の対象を次のように定めています。

事業者は、建築物、工作物又は船舶の解体又は改修(封じ込め又は囲い込みを含む。)の作業を行うときは、(中略)あらかじめ、(中略)石綿等の使用の有無を調査しなければならない。

大気汚染防止法(以下「大防法」)側も同様です。同法施行令第3条の4は「特定粉じん排出等作業」を「特定建築材料が使用されている建築物等を解体する作業」および「改造し、又は補修する作業」と定義しています。

ここで押さえていただきたいのは、どちらの条文にも「切断・破砕等を伴う場合に限る」という限定がないという点です。防水改修も、かぶせ工法(既存の防水層を残して上から施工する工法)も、条文上は「改造・補修」に該当します。

厚生労働省の石綿総合情報ポータルサイトも、次のように明示しています。

解体・改修工事を行う際には、その規模の大小にかかわらず工事前に解体・改修作業に係る部分の全ての材料について、石綿(アスベスト)含有の有無の事前調査を行う必要があります。

実際に存在する除外規定は、工法や面積ではなく着工年によるものが1つあるだけです。石綿則第3条第3項第3号により、着工日が2006年(平成18年)9月1日以降の建築物等については、その着工日を設計図書等の文書で確認する方法のみで足り、現地での目視調査は不要とされています。

事前調査の対象・対象外の判断基準については、アスベスト調査の対象・対象外を完全網羅で詳しく解説しています。

1-2. 屋上で調査対象になる工事の具体例

「屋上に手を入れる工事」は、想像以上に広範囲です。代表的なものを挙げます。

工事の種類 想定される作業 調査が必要になる理由
防水改修(既存撤去) 防水層の撤去・下地処理 防水層そのものを除去する
防水改修(かぶせ工法) 既存防水層の上に新設 端部処理・ドレン廻りで既存層に切断が生じる
フェンス・手すり設置 アンカー打設・コア抜き 防水層と下地を貫通する
太陽光パネル架台の設置 基礎打設・アンカー固定 同上
キュービクル・室外機の設置/更新 基礎の新設・撤去 土台のコンクリート・下地調整材が対象
アンテナ・通信機器の設置 アンカー打設 同上
排水ドレン改修 既存ドレン廻りの斫り 防水層の端末部を切断する
屋上設備の配管貫通 スラブの穿孔 下地調整材・モルタルが対象

アスベストバスターズが実際に調査した事例としては、フェンス設置工事に伴う屋上防水材の事前調査(東京都品川区)や、屋上キュービクル土台の事前調査(栃木県宇都宮市)太陽光発電設備設置工事に伴う調査(埼玉県比企郡)などがあります。いずれも「屋上に何かを設置する」工事です。

1-3. 報告義務のライン|解体80㎡以上・改修100万円以上

事前調査を行ったあと、一定規模以上の工事については、その結果を行政に報告する義務があります。この閾値は、石綿則と大防法で完全に同一です。

対象工事 閾値 石綿則
(労働基準監督署長へ)
大防法
(都道府県知事等へ)
建築物の解体 当該工事に係る部分の床面積の合計が80㎡以上
建築物の改修 請負代金の額が100万円以上
特定工作物の解体・改修 請負代金の額が100万円以上
船舶(総トン数20トン以上) 規定なし

根拠は石綿則第4条の2第1項、および大防法第18条の15第6項の委任を受けた同法施行規則第16条の11第1項です。両者の違いは船舶が含まれるかどうかだけで、建築物・工作物についての数値はまったく同じです。

報告は「石綿事前調査結果報告システム」で1回操作すれば、労働基準監督署と都道府県等の双方に届きます。制度は2022年(令和4年)4月1日着工の工事から始まっています。

実務上の注意点を3つ挙げます。

  1. 請負代金には材料費・仮設工事費・消費税がすべて含まれます。 仮設費を含めて100万円を超える場合は報告対象です。
  2. 工事途中の追加発注で100万円を超えた場合も報告対象となり、速やかに報告する必要があります。
  3. 報告対象となる「工作物」は、17種類の特定工作物に限られます。 反応槽、加熱炉、ボイラー及び圧力容器、配管設備、焼却設備、煙突、貯蔵設備、発電設備、変電設備、配電設備、送電設備、トンネルの天井板、プラットホームの上家、遮音壁、軽量盛土保護パネル、鉄道の駅の地下式構造部分の壁及び天井板、観光用エレベーターの昇降路の囲いの17種です(令和2年厚生労働省告示第278号)。屋上に設置されるキュービクル(変電設備)はこれに該当します。

なお「改修工事は100㎡以上」「請負代金80万円以上」といった数字を目にすることがありますが、いずれも石綿関連法令には存在しません。解体工事の80㎡という数字が建設リサイクル法の対象規模(建築物の解体80㎡以上)と一致するため、同法の他の基準(修繕・模様替1億円以上など)と混同されたものと考えられます。改修工事の判定は面積ではなく請負金額である、と覚えていただくのが確実です。

「この工事にも調査は必要?」の段階からご相談いただけます。
図面と現況写真をお送りいただければ、対象範囲と想定採取箇所をご案内します。

2. 屋上防水の「層構成」を理解する

防水材のアスベスト調査でつまずく最大の原因は、「防水材」を単一の建材だと考えてしまうことです。実際の屋上防水は複数の層が積み重なった構造で、アスベストの含有可能性は層ごとに異なります。

一般的な陸屋根は、下から順に「躯体スラブ → 下地調整材 → プライマー → 防水層 →(保護層)」という構成になっています。このうちどの層が調査対象になるかは、工事の内容によって変わります

2-1. アスファルト防水(熱工法・トーチ工法・常温粘着工法)

溶融したアスファルトでルーフィングシートを積層する熱工法は、屋上防水の最も伝統的な工法です。ルーフィングを複数枚重ねるため層が厚く、古い建物ほど採用されています。

トーチ工法は改質アスファルトシートの裏面をバーナーで炙って接着する工法、常温粘着工法は加熱せず粘着層で貼り付ける工法で、いずれも比較的新しい世代の工法です。

アスベストとの関係で最も注意が必要なのは、熱工法で使われた古いアスファルトルーフィング類です。後述するとおり、含有率が45%に達する製品も存在しました。

2-2. シート防水(塩ビ系・加硫ゴム系)

塩化ビニル樹脂系または加硫ゴム系のシートを、接着または機械的固定で敷設する工法です。1970年代以降に普及しました。

シート本体については、後述のとおり公的に「非含有建材」として整理されています。ただし接着剤や下地調整材は別の建材であり、調査対象から外れるわけではありません。

2-3. ウレタン塗膜防水・FRP防水

液状のウレタン樹脂を塗り重ねて防水層を形成する工法と、ガラス繊維とポリエステル樹脂による工法です。改修工事でかぶせ施工されることが多く、既存の古い防水層の上に新しいウレタン層が乗っているケースが少なくありません。

この場合、表層のウレタンが新しくても、その下に古いアスファルト防水層が残っている可能性があります。表面の見た目だけで築年を判断すると誤ります。

2-4. 押えコンクリート・保護モルタル・伸縮目地

防水層の上にコンクリートやモルタルを打設して保護する構造を「保護防水(押え工法)」、防水層が露出しているものを「露出防水」と呼びます。

保護防水の場合、防水層に到達するには押えコンクリートを斫る必要があり、調査・撤去の範囲と手間が大きく変わります。図面で確認できない場合は、現地での確認が必要です。

2-5. 露出防水と保護防水の違いが、調査範囲を決めます

まとめると、次のように整理できます。

構成 調査で確認すべき層
露出アスファルト防水 防水層(ルーフィング各層)/プライマー/下地調整材
保護アスファルト防水 押えコンクリート・保護モルタル/防水層/プライマー/下地調整材
シート防水 シート(非含有建材)/接着剤/下地調整材
ウレタン塗膜防水(新設) 塗膜(非含有建材)/プライマー/下地調整材
ウレタン塗膜防水(かぶせ) 上記に加え、下層に残る旧防水層

3. 防水材ごとのアスベスト含有可能性【一覧表】

ここが本記事の中核です。防水関連の材料を、「含有実績が明確なもの」「公的に非含有とされているもの」「判断がつかないもの」の3つに分けて整理します。

3-1. 含有実績が明確なもの

国土交通省・経済産業省の「石綿(アスベスト)含有建材データベース」には、「石綿含有ルーフィング」という建材名(一般名)が正式に登録されており、12製品が収録されています。データベースはこれを「屋根防水材として、主にRC造の建物の屋上に施工されるアスファルト防水層の構成材料」と定義しています。まさに屋上のアスファルト防水そのものです。

登録されている製品の一部を示します(すべてクリソタイル)。

商品名 メーカー 製造期間 含有率
アスベストフェルト 日新工業 1943〜1986年 45%
アスベストウエルドルーフィング 日新工業 1943〜1986年 18%
石綿ギルソイドルーフィング 田島ルーフィング 1937〜1987年 10〜20%
アスベース 田島ルーフィング 1970〜1972年 10〜20%
石綿砂付ルーフィング 田島ルーフィング 1950〜1970年 10〜20%
アスベスト砂付ルーフィング 日新工業 1943〜1986年 10%
エスキャップ 日新工業 1977〜1986年 10%

含有率45%という数字にご注目ください。「防水材はレベル3だから含有率も低いはず」という思い込みは、実態と合いません。レベル分類は飛散性の目安であって、含有率の指標ではありません。

分類としては、次の3種が含有実績の明確な材料です。

  • アスファルトフェルト(特殊アスファルトフェルト類)
  • アスファルトルーフィング(特殊アスファルトルーフィング類)
  • 砂付ルーフィング

3-2. 公的に「非含有」とされているもの

一方で、政府データベースの「アスベスト非含有建材」一覧に明記されているものもあります。

材料 該当する記載
シート防水(塩ビ系・加硫ゴム系) 「合成高分子系ルーフィングシート(JIS A 6008該当品)」として非含有建材に明記
ウレタン塗膜防水 「建築用塗膜防水材(ウレタン防水)」として非含有建材に明記

ただし、これは「その建材そのものは非含有と整理できる」という意味です。同じ屋上に存在する接着剤・プライマー・下地調整材まで非含有であることを保証するものではありません。シート防水だから調査不要、とはなりません。

3-3. 判断がつかないもの(分析を推奨します)

調査の過程で、含有を示す資料も、非含有を明言する資料も見つけられなかった材料があります。この点は正直にお伝えします。

  • ストレッチルーフィング/砂付ストレッチルーフィング
  • あなあきルーフィング
  • 改質アスファルトシート(トーチ工法等で使用、JIS A 6013対応品)
  • アスファルトプライマー
  • 伸縮目地材

ストレッチルーフィングは合成繊維不織布を原反とするため、石綿原紙を基材とする旧来のルーフィングとは製造上の系統が異なります。しかし「石綿を含有していない」と明言する一次資料は確認できませんでした。資料がないことは、非含有の証明にはなりません。 これらの材料が対象範囲に含まれる場合は、分析による確認をおすすめします。

3-4. 混同にご注意|「防水形」仕上塗材は別物で、含有実績があります

名称が紛らわしいため、実務で頻繁に混同されるものがあります。外壁に使われる「防水形」の仕上塗材です。

材料 製造期間 含有率
防水形外装薄塗材E(単層弾性) 1979〜1988年 0.1〜0.2%
防水形複層塗材E(複層弾性) 1974〜1996年 0.1〜4.6%

(出典:日本建築仕上材工業会)

これらは屋上の防水材ではなく、外壁の仕上塗材です。「防水」という語が付くため屋上防水と取り違えられることがありますが、まったく別の建材で、調査の対象部位も異なります。

外壁側の仕上塗材については、アスベスト外壁の完全ガイドをご覧ください。

4. 築年で見る4つの境界線

「屋上防水のアスベストは1987年で切れる」——業界内でよく語られる基準です。しかしこの理解のまま調査範囲を決めると、判定を誤る可能性があります

境界線は1本ではなく、対象とする材料ごとに4本あります。

境界年 対象材料
1986年 特殊アスファルトフェルト類
1987年 特殊アスファルトルーフィング類(=いわゆる「防水層単独」)
1991年 ポリウレタン系断熱材の面材(断熱防水)
2003年 アスファルト系ルーフコーチング類・アスファルト系接着剤
2005年 下地調整塗材C(セメント系フィラー)

4-1. 1987年|防水層単独。ただし「何の年」かを正確に理解してください

まず、1987年が何の年なのかを正確に押さえる必要があります。

これはJISが改正された年でも、法令で禁止された年でもありません。 一般社団法人日本防水材料協会(JWMA)アスファルト防水部会が会員各社に対して行ったアンケートにおいて、特殊アスファルトルーフィング類への石綿配合を最後にやめた会社の年です。

JWMAの資料は次のように述べています。

防水層単独については昭和62年(1987年)以降、ポリウレタン系断熱材を併用した断熱防水層については平成3年(1991年)以降、ルーフコーチング類やアスファルト系接着剤については平成15年(2003年)以降に施工された建物であれば、アスベストは含まれていないか、0.1重量%未満であり石綿障害予防規則には該当しません。

同資料は「配合開始時期と終了時期はメーカーにより異なりますが、各々の最終終了時期を示します」とも明記しています。つまり1987年は「業界全体で最も遅かった会社の年」であり、多くのメーカーはそれ以前に配合をやめていました。

なお「JIS A 6005の改正が根拠」とする説明を見かけることがありますが、国土交通省・経済産業省のデータベースに付属する「『アスベストデータベース』に関連する日本工業規格(JIS)の変遷」にJIS A 6005は掲載されておらず、この説を裏付ける一次資料は確認できませんでした

別の軸として、建築工事共通仕様書では、特殊アスファルトルーフィング類の使用が規定されていたのは昭和48年版以前でした。仕様書から落ちた年と、製造が止まった年には14年の開きがあります。

4-2. 1991年|断熱防水は、1987年では判定できません

ポリウレタン系断熱材を併用した断熱防水の場合、境界年は1991年です(断熱材の面材が対象。含有率5%以上のものは1979年まで)。

屋上に断熱材が入っている構成では、1987年を基準にすると4年分の見落としが生じます。

4-3. 2003年|ルーフコーチング類・アスファルト系接着剤

アスファルト系ルーフコーチング類は2002年、アスファルト系接着剤は2003年が最終終了時期です(いずれも大半のメーカーは1991年に終了)。

防水層本体が非含有でも、接着に使われた材料が含有しているという構成があり得ます。

アスファルト系接着剤(カットバック系)については、アスベスト含有の接着剤とは|床・タイル下に潜む石綿で詳しく解説しています。

4-4. 2005年|下地調整塗材が最大の落とし穴です

実務上、最も重要なのがこの境界線です。

日本建築仕上材工業会の公表資料によれば、下地調整塗材の石綿含有品は次の期間まで製造されていました。

材料 製造期間 含有率
下地調整塗材C(セメント系フィラー) 1970〜2005年 0.1〜6.2%
下地調整塗材E(樹脂系フィラー) 1982〜1987年 0.5%

防水層本体の1987年より、18年も遅くまで石綿含有品が存在していました。

防水改修で下地まで斫る工事、あるいはアンカー打設やコア抜きで下地に到達する工事では、防水層が非含有でも下地調整材で検出される可能性があります。「1987年以降の建物だから」という理由で調査範囲から下地を外すのは、危険な判断です。

環境省の「石綿飛散防止対策マニュアル」も、下地調整塗材について次のように述べています。

石綿を含有する下地調整塗材は、石綿含有成形板等に区分される。原形のまま取り外すことは困難であるため、湿潤化が必要となる。

下地のモルタル系材料については、アスベスト含有モルタルの全知識もあわせてご覧ください。

4-5.「1987年以降なら安全」と言い切れない、もう2つの理由

年代スクリーニングには、さらに2つの限界があります。

第一に、JWMAの資料自体が適用範囲を限定しています。 同資料には次の注記があります。

本資料は参考資料であり、石綿障害予防規則の事前調査の証明資料には該当しません。

調査は現在の会員会社を対象に行ったものであり、現会員以外の製品は今回の調査対象には含まれておりません。

対象となった会員社は6社(静岡瀝青・昭石化工・田島ルーフィング・東和工業・七王工業・日新工業)です。データベースに製品登録のある東亜工業は含まれておらず、同社の製品は「石綿含有の可能性がある建材」として扱われています。

第二に、メーカー自身が年代不問の分析を推奨しています。 会員社である日新工業は、自社サイトで次のように説明しています。

上記以外のルーフィング類でも微量のアスベストが検出される場合があります(中略)天然鉱物(粉状のタルク、セピオライト、バーミキュライト及び天然ブルーサイト)中に不純物として含まれておりました。

1989年(平成元年)に製造中止したアスベスト繊維含有の接着剤(中略)はアスベスト繊維に代えセピオライトを使用(中略)代替として使用していたセピオライトにはトレモライトが一部含まれていたことを確認しております。

よって、施工年月日、防水工法・仕様に限らずアスベスト含有率を分析調査されることを推奨致します。

築年による判定は、調査の優先順位をつけるための手段であって、調査を免除する根拠ではありません。 アスベストバスターズでも、年代情報は採取箇所を絞り込むために活用しますが、それだけで含有の有無を結論づけることはしていません。

早見表|築年 × 構成 × 確認すべき層

施工年 アスファルト防水 断熱防水 接着剤・コーチング 下地調整材
〜1986年 要確認 要確認 要確認 要確認
1987〜1991年 低(要確認) 要確認 要確認 要確認
1992〜2003年 要確認 要確認
2004〜2005年 要確認
2006年9月〜 文書確認で可 文書確認で可 文書確認で可 文書確認で可

※「低」は含有可能性が相対的に低いという意味であり、非含有の証明ではありません。かぶせ工法により古い層が下に残っている場合は、表層の施工年では判断できません。

築年と工事内容から、調査すべき層を絞り込みます。
「1987年以降だから不要」と判断してよいか、有資格者が個別に確認します。

5. 防水層の見分け方と、調査の実務

5-1. 目視でわかること・わからないこと

現地の目視で判断できるのは、おおむね次の範囲です。

わかること:露出防水か保護防水か/防水工法の系統(アスファルト系かシート系か塗膜系か)/おおよその層数/劣化状況/改修履歴の痕跡

わからないことアスベスト含有の有無/各層の材料の正確な製品名/下層に残る旧防水層の構成

アスファルト防水層は黒色で、層の境界が視認しにくい材料です。色・質感・においからアスベストの有無を判定することはできません。

5-2. 層別分析が必須である理由

防水材の調査で決定的に重要なのが、「1点だけ採取して終わりにしない」ことです。

アスベストバスターズが実施した屋上防水材の事前調査事例(東京都品川区)では、フェンス設置工事に伴い屋上床の防水材を調査しました。このとき採取した検体は、4つの層に分けて個別に分析しています。

外観
塗膜 グレー
ゴム基材
接着剤
下地 薄グレー

結果は4層すべて不含有でしたが、重要なのは「4層に分けた」という手順そのものです。仮に接着剤層だけが0.1%を超えていれば、その工事は石綿含有建材を取り扱う作業として規制の対象になります。1層でも0.1%を超えれば規制対象である以上、まとめて1検体として分析する方法では判定できません。

瓦やスレートのような単一素材の建材と、防水層のような多層構造の建材とでは、調査の設計そのものが異なります。ここが防水材調査の難しさです。

5-3. 石綿含有建材データベースの調べ方|「防水」では検索できません

国土交通省・経済産業省の石綿含有建材データベースは、事前調査の有力なツールです。ただし防水材については、検索方法に注意が必要です。

フリーワード検索で「防水」「ルーフィング」と入力しても、ヒットしません。 「建材名(一般名)」のプルダウンから「石綿含有ルーフィング」を選択する必要があります。

さらに構造上の注意点として、アスファルト防水の材料・副資材はデータベースに個別登録されていません。データベースの「関連情報」ページは、これらについて次のように業界団体へ委ねています。

石膏ボード、壁紙及びアスファルト防水材料・副資材について(中略)関係団体のホームページで公表されていますので、次のホームページをご参照下さい。

つまり、データベースだけを見て「ヒットしないから防水材にアスベストはない」と結論づけるのは誤りです。データベースとJWMA資料の両方を確認する必要があります。

なお、現行のデータベースは2015年(平成27年)2月版です。

データベースの操作方法については、石綿含有建材データベース完全ガイドで解説しています。

5-4. 分析方法

採取した検体は、JIS A 1481-1(偏光顕微鏡法)等の方法で分析します。防水材のように層構成が複雑な検体では、層を物理的に分離してから個別に分析する手順が重要になります。

5-5. 有資格者要件|建築物は2023年10月から、工作物は2026年1月から

事前調査は、誰が行ってもよいわけではありません。

対象 有資格者が必要になった時期 必要な資格
建築物(一戸建て等を除く) 2023年(令和5年)10月1日 一般建築物石綿含有建材調査者/特定建築物石綿含有建材調査者
一戸建て住宅等 同上 上記+一戸建て等石綿含有建材調査者
特定工作物 2026年(令和8年)1月1日 工作物石綿事前調査者(一部は建築物調査者も可)
分析調査 2023年(令和5年)10月1日 分析調査講習修了者等

屋上には、建築物の一部である防水層と、工作物に該当する設備(キュービクル=変電設備、煙突、貯蔵設備など)が同居していることがあります。工事範囲によっては、両方の資格要件を確認する必要があります。

分析についても2023年10月から有資格者要件が課されている点は、見落とされやすいところです。

資格の詳細はアスベスト調査に必要な資格一覧、工作物については【2026年義務化】工作物のアスベスト事前調査をご覧ください。

6. 含有が判明したときの改修・撤去

6-1. レベル3相当として扱われます

石綿含有ルーフィングは、国土交通省の「建築物石綿含有建材調査マニュアル」において、屋根材として「石綿含有ルーフィング 1937〜1987」と明記され、レベル3相当(その他の石綿含有建材)に分類されています。

ここで重要な注記があります。レベル1・2・3という区分は、法令上の分類ではありません。 同マニュアルは次のように述べています。

建設業労働災害防止協会の「建築物の解体等工事における石綿粉じんへのばく露防止マニュアル」では作業レベルとしてレベル1〜3を分類しているが、便宜的に主な建材の区分としても使用されている。

つまり、もともとは作業の危険度を表す指標であり、建材の分類として使うのは便宜上の運用です。「レベル3だから規制が緩い」という理解は誤りで、法令上は石綿則の「石綿等」、大防法の「特定建築材料」として、レベル1・2と同じ枠組みで規制されます。

なお、環境省のマニュアルでは石綿含有成形板等の施工部位の例として「屋根」欄にスレート波板と住宅屋根用化粧スレートのみが挙げられており、ルーフィングが記載されていません。国土交通省のマニュアルには明記され、環境省のマニュアルには記載がないという食い違いがあります。石綿則第6条の2の定義(成形された材料であって石綿等が使用されているもの)に照らせば、ルーフィングは文理上含まれると考えられます。

レベル分類についてはアスベストのレベルとは?レベル1・2・3の違いで解説しています。

6-2. 原形撤去が原則。ただし防水層は湿潤化が現実解になります

大防法施行規則 別表第七 四の項は、石綿含有成形板等の除去作業について次の順序を定めています。

  1. 切断、破砕等することなく、そのまま取り外す(原形撤去の原則)
  2. 原形撤去が技術上著しく困難な場合、または作業の性質上適さない場合は、薬液等により湿潤化する

環境省のマニュアルは、「技術上著しく困難な場合」の具体例として、「当該材料が下地材等と接着材で固定されており、切断等を行わずに除去することが困難な場合」を挙げています。

アスファルト防水層は下地に密着している構造であるため、この例に該当しやすく、実務上は湿潤化を伴う撤去になると考えられます。

6-3. かぶせ工法という選択肢と、将来の解体時リスク

既存の防水層を撤去せず、上から新しい防水層を施工する「かぶせ工法」は、撤去に伴う飛散リスクと廃棄物処理費用を回避できる選択肢です。

ただし2点の留意が必要です。

第一に、かぶせ工法でも事前調査は必要です。条文上「改造・補修」に該当し、端部処理やドレン廻りでは既存層への切断が生じます。なお、かぶせ工法を名指しした行政のQ&Aは確認できておらず、個別の作業基準の適用については所轄の労働基準監督署・自治体にご確認ください

第二に、含有建材は建物内に残ります。 将来の解体時には改めて調査と適切な処理が必要になり、そのことを記録として引き継ぐ必要があります。目先の費用と将来の負担を含めた比較が必要です。

6-4. 届出は不要ですが、作業基準と報告義務は適用されます

ここは混同されやすい点です。

手続き レベル1・2 レベル3(防水材を含む)
大防法第18条の17の届出 必要 不要
石綿則第5条の作業届 必要 不要
作業基準の適用 あり あり
事前調査結果の報告(80㎡/100万円) 必要 必要

「届出不要」は「何もしなくてよい」ではありません。 作業基準は適用されますし、規模要件を満たせば事前調査結果の報告義務も生じます。

6-5. 処分区分|石綿含有産業廃棄物であり、廃石綿等ではありません

撤去した防水材の廃棄物区分は、「石綿含有産業廃棄物」です。

  • 石綿含有産業廃棄物(廃棄物処理法施行規則第7条の2の3):工作物の新築・改築・除去に伴って生じた産業廃棄物であって、石綿を重量の0.1%を超えて含有するもの
  • 廃石綿等(特別管理産業廃棄物):吹付け石綿、石綿保温材、けいそう土保温材、パーライト保温材等に限定

防水材は有機系樹脂で固定されており非飛散性であるため、特別管理産業廃棄物である「廃石綿等」には該当しません

処理基準としては、収集運搬時に他のものと混合するおそれのないよう仕切りを設けること、埋立処分は最終処分場の一定の場所において分散しないように行い、表面を土砂で覆う等の措置を講じることなどが定められています(廃棄物処理法施行令第6条第1項)。マニフェストにも石綿含有産業廃棄物である旨の記載が必要です。

7. 屋上防水のアスベスト事前調査にかかる費用と期間

屋上防水の調査費用は、採取箇所数と分析点数によって変動します。防水材は層別分析が必要になるため、1箇所からの採取でも分析点数が複数になる点が、他の建材と異なります。

押えコンクリートがある保護防水の場合は、防水層に到達するための作業が加わります。

正確なお見積もりは、図面と現況写真を拝見したうえでご案内します。料金の考え方は料金ページをご覧ください。

8. アスベストバスターズの屋上防水アスベスト事前調査

アスベストバスターズは、石綿事前調査を専門とする調査会社です。屋上・陸屋根の防水材調査について、次の体制でご対応しています。

  • 建築物石綿含有建材調査者による調査(分析も有資格者が対応)
  • 全国対応(首都圏・関西・福岡を含む)
  • 層別分析による正確な判定
  • 立会いが難しい場合も、調査員単独での調査が可能
  • 採取箇所は防水性能に影響が出ないよう配慮し、適切な補修を実施
  • 調査から報告書作成までワンストップ
  • 翌日調査・土日対応もご相談いただけます

「この工事に調査は必要か」という段階からのご相談も承ります。

お電話0120-74-1480(受付:平日9:00-18:00)
メールinfo@asbestos-busters.com

9. よくある質問(FAQ)

Q1. アスファルト防水にアスベストは含まれますか?

含まれている可能性があります。国土交通省・経済産業省の石綿含有建材データベースには「石綿含有ルーフィング」として12製品が登録されており、含有率が45%に達する製品も確認されています。日本防水材料協会(JWMA)の資料によれば、特殊アスファルトルーフィング類への石綿配合は1987年(昭和62年)を最後に終了していますが、これは会員各社のうち最も遅かった社の年であり、非含有を保証するものではありません。

Q2. 1987年以降に施工された屋上なら、調査は不要ですか?

不要とはなりません。理由は3つあります。第一に、1987年という年が適用されるのは「防水層単独」の場合で、断熱防水は1991年、アスファルト系接着剤は2003年、下地調整塗材Cは2005年まで石綿含有品が製造されていました。第二に、JWMAの資料自体が「事前調査の証明資料には該当しない」「調査対象は現会員社に限る」と適用範囲を限定しています。第三に、メーカー自身が天然鉱物由来の不純物混入を理由に、施工年月日や工法によらず分析調査を推奨しています。

なお、着工日が2006年9月1日以降の建築物については、石綿則第3条第3項第3号により、着工日を設計図書等の文書で確認する方法で足ります。

Q3. シート防水やウレタン塗膜防水も調査の対象になりますか?

調査の対象になります。シート防水(合成高分子系ルーフィングシート、JIS A 6008該当品)とウレタン塗膜防水(建築用塗膜防水材)は、政府のデータベースで「アスベスト非含有建材」として整理されています。ただし、これはその材料自体についての整理であり、接着剤・プライマー・下地調整材は別の建材です。また、かぶせ工法により下層に古いアスファルト防水層が残っている場合もあります。

Q4. 屋上にフェンスや太陽光パネルを設置するだけでも、調査は必要ですか?

必要です。石綿則第3条第1項および大防法施行令第3条の4には、工法や規模による除外の定めがありません。アンカー打設やコア抜きは防水層と下地を貫通する作業であり、対象となる材料に石綿が含まれていないかを事前に確認する必要があります。厚生労働省も「その規模の大小にかかわらず」事前調査が必要であるとしています。

Q5. 防水層を撤去せず、上から被せる場合も調査は必要ですか?

必要です。かぶせ工法も条文上は「改造・補修」に該当します。また、端部処理や排水ドレン廻りでは既存の防水層に切断が生じることが一般的です。ただし、かぶせ工法における作業基準の具体的な適用については行政のQ&Aが公表されておらず、所轄の労働基準監督署・自治体にご確認いただくことをおすすめします。

Q6. 屋上防水のアスベスト調査は、誰に頼めばよいですか?

建築物石綿含有建材調査者(一般または特定)の資格を持つ調査者に依頼する必要があります。2023年10月1日以降、建築物の事前調査は有資格者が行うことが義務づけられています。屋上のキュービクル等の工作物が調査範囲に含まれる場合は、2026年1月1日以降、工作物石綿事前調査者の資格も関係します。あわせて、防水材のような多層構造の建材について層別分析の実績があるかを確認されることをおすすめします。

まとめ

屋上・陸屋根の防水材は、アスベスト調査から抜け落ちやすい建材です。本記事の要点を整理します。

  • 屋上に手を入れる工事は、防水改修だけでなくフェンス設置・太陽光架台・設備更新までが調査の対象になります
  • 報告義務のラインは解体80㎡以上/改修100万円以上。石綿則と大防法で数値は同一です
  • 防水層は多層構造であり、1点採取ではなく層別分析が必要です
  • 政府データベースはフリーワード「防水」ではヒットしません。「石綿含有ルーフィング」を一般名から選択してください

そして、最も覚えていただきたいのは年代の判定基準です。

1987年で切れるのは、防水層本体だけです。断熱防水は1991年、アスファルト系接着剤は2003年、そして下地調整塗材は2005年まで石綿含有品が製造されていました。

築年による絞り込みは、調査の優先順位をつけるための手段です。調査そのものを省略する根拠にはなりません。

屋上の工事を予定されていて、調査範囲の判断に迷われている場合は、図面と現況写真をお送りいただければ想定採取箇所をご案内します。ご相談は無料です。

屋上防水のアスベスト事前調査は、アスベストバスターズにご相談ください。
建築物石綿含有建材調査者が全国対応。層別分析で正確に判定し、報告書作成までワンストップで承ります。

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アスベストバスターズ編集部は、アスベスト調査・除去に関する専門的知識を提供する編集チームです。
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