この記事の要約
- アスベスト保温材は発じん性が高い「レベル2」に分類され、解体・改修時の飛散リスクが極めて高い建材です。
- 配管、ボイラー、ダクトなどに使用されており、グラスウールやロックウールとの見分けには専門的な知識が必要です。
- 2022年の法改正により、解体・改修工事前の事前調査が義務化され、2023年10月からは「建築物石綿含有建材調査者」、2026年1月からは「工作物石綿事前調査者」による有資格者調査が必須となりました。
- 除去費用は配管1mあたり数万円が相場ですが、立地条件や工法(除去・封じ込め・囲い込み)により大きく変動します。
- 信頼できる業者選定には、資格の有無やマニフェスト(産業廃棄物管理票)の適正な運用確認が不可欠です。
建築物の維持管理や解体工事において、最も慎重な対応が求められるのが「アスベスト(石綿)」の取り扱いです。中でも、配管やボイラーに使用される「アスベスト保温材」は、吹き付けアスベストに次いで飛散リスクが高い「レベル2」に分類されており、経年劣化による粉じんの吸入事故が後を絶ちません。かつて「魔法の鉱物」として高度経済成長期のビルや工場に大量に導入されたこの素材は、現在では静かなる脅威として建物所有者や管理者に重い法的責任と適正な処理義務を課しています。本記事では、アスベスト保温材の基礎知識から、グラスウールなどの代替材との見分け方、法改正に対応した正しい調査・除去手順、そして気になる費用相場まで、専門的な視点で徹底解説します。
アスベスト保温材とは?基礎知識と他の断熱材との違い

アスベスト保温材とは、石綿(アスベスト)を主原料、または結合材として使用し、熱を逃がさない(あるいは熱を侵入させない)目的で製造された建材のことです。主にビルや工場、学校などの配管、ボイラー、ダクトなどの設備機器に巻き付けたり、塗り付けたりして使用されてきました。
見た目は白っぽく、綿のような形状をしていることが多いため、専門知識がない一般の方が一見しただけでは、現在も広く使われている安全な断熱材(グラスウールやロックウール)と区別がつかないことが多々あります。しかし、その性質は全く異なります。アスベスト保温材は、非常に微細な繊維が絡み合ってできており、振動や劣化によって繊維が空気中に飛散しやすいという特徴を持っています。
現在、アスベストの使用は全面的に禁止されていますが、過去に建設された建物には依然として多くの保温材が残存しており、改修や解体工事の際に大きな問題となっています。
なぜ保温材にアスベストが使われたのか?その特性と歴史
なぜ、これほど危険な物質が保温材として大量に使用されたのでしょうか。それは、アスベストが当時の建築資材として極めて優秀な特性を持っていたからです。
アスベストは「耐熱性」「断熱性」「耐薬品性」「絶縁性」に優れ、さらに「安価」で加工もしやすいという、まさに夢のような素材でした。特にボイラーや蒸気配管など、高温になる設備においては、熱を逃さず、かつ燃えない素材としてアスベスト保温材は不可欠な存在でした。
日本では1950年代から1980年代にかけて、高度経済成長とともにビルの建設ラッシュが起き、その多くの現場でアスベスト保温材が採用されました。しかし、その後の健康被害の発覚により規制が強化され、現在では製造・使用が禁止されています。
アスベスト保温材とグラスウール・ロックウールの見分け方
現場で最も頭を悩ませるのが、「これはアスベストなのか、それともただのグラスウールなのか?」という判断です。最終的な確定には専門機関による分析が必要ですが、目視でもある程度の推測は可能です。以下の比較表を参考にしてください。
| 特徴 | アスベスト保温材 | グラスウール・ロックウール(非アスベスト) |
|---|---|---|
| 外観・色 | 白または灰色っぽい。経年劣化で変色していることが多い。 | 黄色(グラスウール)や緑がかった灰色(ロックウール)が多い。 |
| 繊維の質感 | 繊維が非常に細く、綿のように柔らかい。指で潰すと粉状になりやすい。 | 繊維が太く、チクチクする硬さがある。ガラス質や岩石質で光沢がある場合も。 |
| 施工箇所 | 配管のエルボ(曲がり角)やフランジ、ボイラー本体に「塗り付け」られていることが多い。 | 配管の直管部分に筒状の成形品が巻かれていることが多い。 |
| 製造年代 | 1980年代以前の建物に多い。 | 1990年代以降、または近年の改修で使用。 |
特に注意が必要なのは、配管の「エルボ(曲がり角)」部分です。直管部分はグラスウールでも、施工が難しい曲がり角だけアスベスト含有の保温材(練り保温材など)が手作業で塗り付けられているケースが非常に多く見られます。「直管が安全だから全体も安全」という思い込みは危険です。
危険度は「レベル2」:アスベスト保温材の健康リスクと飛散性
アスベスト建材は、解体や改修作業を行った際の「粉じんの飛散しやすさ(発じん性)」によって、レベル1からレベル3までの3段階に分類されています。このレベル区分は、作業員の安全確保や周辺環境への配慮、そして法的な届出義務を決定する極めて重要な基準です。
アスベスト保温材は、この中で「レベル2」に分類されます。
レベル2は「飛散性が高い」部類に入ります。レベル1の「著しく高い」に次ぐ危険度であり、通常の板状の建材(レベル3)とは比較にならないほど厳重な管理が求められます。保温材は密度が低く軽いため、一度破壊されると大量の微細な繊維が空中に舞い上がり、長時間浮遊し続ける特性があります。そのため、除去作業には高度な飛散防止対策が必須となります。
発じん性「レベル2」の意味と、レベル1・3との違い
各レベルの違いを正しく理解しておくことは、リスク管理の第一歩です。
- レベル1(発じん性が著しく高い):
代表例は「吹き付けアスベスト」。綿状のアスベストをそのまま吹き付けたもので、少しの衝撃で容易に飛散します。最も危険な区分です。 - レベル2(発じん性が高い):
代表例が今回のテーマである「アスベスト保温材」「耐火被覆材」「断熱材」です。シート状や筒状に成形されていますが、密度が低く、切断や破砕を行うとレベル1同様に高濃度の粉じんが発生します。 - レベル3(発じん性が比較的低い):
代表例は「スレート波板」「Pタイル(床材)」などの硬い成形板です。アスベストが硬く固められているため、割ったり削ったりしない限り、飛散リスクは比較的低いとされています。
保温材(レベル2)は、配管の撤去時などにカッターを入れたり、解体時に押しつぶしたりする瞬間に、爆発的に繊維が飛散するため、レベル1に準じた厳格な対策が必要です。
吸入による健康被害:石綿肺・中皮腫のリスクと潜伏期間
アスベストの繊維は髪の毛の5,000分の1という極めて細いものです。これを吸い込むと、肺の奥深くまで到達し、体外に排出されずに蓄積されます。これが引き起こす健康被害は深刻です。
- 石綿肺(アスベスト肺): 肺が線維化し、呼吸困難になる病気。
- 肺がん: アスベスト曝露により発症リスクが高まります。
- 悪性中皮腫: 肺や心臓を覆う膜にできる悪性腫瘍。アスベスト特有の病気と言われています。
最大の特徴は「静かな時限爆弾」と呼ばれるほどの長い潜伏期間です。吸入してから発症するまで、20年から40年、長い場合は50年もの歳月がかかります。「その時は何ともなかった」としても、数十年後に突然発症するのがアスベストの恐ろしさです。
経年劣化による飛散リスク:配管やボイラー周辺の注意点
アスベスト保温材のリスクは、解体工事の時だけではありません。建物を使用している通常の状態でもリスクは潜んでいます。
特にボイラー室や機械室など、常に振動が発生している場所や、雨漏り・結露が発生している場所では、保温材の経年劣化が早く進みます。表面のラッキング(外装材)が破れ、中の保温材がむき出しになっている場合、空調の風やわずかな振動でアスベスト繊維が室内に飛散し続ける可能性があります。普段立ち入らない場所であっても、定期的な点検と、劣化が見られた場合の早急な封じ込め処置が必要です。
アスベスト保温材が使用されている主な場所と年代

建物内のどこにアスベスト保温材が潜んでいるかを知ることは、無用な被ばくを避けるために重要です。保温材は壁や天井の裏側、機械室の奥など、普段の生活では目に触れない「バックヤード」に多く使用されています。
ここでは、特に注意すべき年代と具体的な使用箇所について解説します。ご自身の所有・管理する建物が該当するかどうか、チェックしてみてください。
使用年代の目安:いつ建てられた建物が危険か?
アスベストの使用規制は段階的に行われてきましたが、保温材に関しては以下の年代が目安となります。
- 1975年(昭和50年)以前:
アスベストの含有率が高い保温材が大量に使用されていた時期です。この時期に建てられたビルや工場は、高確率で使用されていると考えた方が良いでしょう。 - 1975年〜1980年代後半:
原則禁止の流れが進みましたが、一部の用途や製品では使用が続いていました。 - 2006年(平成18年)以前:
2006年に労働安全衛生法施行令が改正され、アスベスト含有量が重量の0.1%を超える製品の製造・使用が全面的に禁止されました。つまり、2006年以前の建物には、微量であってもアスベストが含まれている可能性があります。
「古い建物だから危ない」という認識は正しいですが、「平成に入ってからの建物だから絶対安全」とは言い切れない点に注意が必要です。
要注意箇所①:ボイラー本体・配管のエルボやフランジ
最も代表的な使用箇所は、熱源設備周りです。
- ボイラー本体・タンク: 表面全体が保温材で覆われていることがあります。
- 配管のエルボ(曲がり角): 直管部分は既製品のグラスウールでも、複雑な形状のエルボ部分は、施工性の良いアスベスト含有の練り保温材(プラスター)が手作業で塗られているケースが多発しています。
- フランジ・バルブ類: 配管のつなぎ目や弁の周りも、同様に練り保温材や、アスベストを含んだ布団状の保温材が巻かれていることがあります。
要注意箇所②:空調ダクト・煙突・屋根裏の断熱材
空調設備や排気設備も見逃せません。
- 空調ダクト: ダクトの継ぎ目(フランジ)に挟み込まれているパッキンや、ダクト外部に巻かれた断熱材にアスベストが含まれていることがあります。
- 煙突(カポスタック): ボイラーや焼却炉の煙突内部に、アスベストを含む断熱材(カポスタックなど)が使用されているケースがあります。これは高温にさらされ劣化が激しいことが多く、飛散リスクが高い箇所です。
- 屋根裏(折板屋根): 工場や倉庫の屋根裏に、結露防止や断熱目的でフェルト状のアスベスト保温材が貼り付けられていることがあります。
電気工事・設備業者が注意すべき隠れた使用箇所
配管工だけでなく、電気工事や設備メンテナンスに関わる方も注意が必要です。
例えば、古い受変電設備(キュービクル)内の配線被覆や、配電盤の裏側にある耐熱板、ケーブルを通す貫通部の充填材(パテ)などにアスベストが使用されていることがあります。改修工事でケーブルを撤去したり、盤を交換したりする際に、知らずにアスベストを飛散させてしまうリスクがあるため、事前の確認が不可欠です。
アスベスト保温材の調査手順と法的な義務

「もしかしたらアスベストがあるかもしれない」と思った時、あるいは建物の解体・改修工事を計画した時、法律に基づいた適切な手順を踏むことが義務付けられています。2022年(令和4年)4月以降、アスベストに関する法規制は大幅に強化されており、「知らなかった」では済まされない厳しい罰則も設けられています。
解体・改修工事前の「事前調査」は義務です
大気汚染防止法および石綿障害予防規則の改正により、建築物の解体・改修工事を行う際は、規模の大小にかかわらず、原則としてすべてのアスベスト事前調査を行うことが義務化されました。
これは、壁を壊すような大規模な工事だけでなく、配管の交換、空調設備の更新、さらには内装のリフォームといった小規模な工事も対象です。工事の受注者(施工業者)は調査を行い、発注者(施主)に書面で説明しなければなりません。また、一定規模以上の工事については、労働基準監督署や自治体への報告も義務付けられています。
調査の流れ:書面調査・現地目視調査・分析調査
適正なアスベスト調査は、以下の3段階のプロセスで行われます。
- 第1次スクリーニング(書面調査):
建物の設計図書、竣工図、過去の改修履歴などを確認し、使用されている建材の種類や施工年代から、アスベスト含有の可能性を洗い出します。 - 第2次スクリーニング(現地目視調査):
実際に現地を訪問し、建材の状態、種類、設置場所を目視で確認します。図面と現状が異なるケースも多いため、非常に重要な工程です。保温材の劣化状況や、裏側に隠れた建材などもチェックします。 - 分析調査:
書面と目視で「アスベスト含有の疑いあり」と判断された建材について、サンプルを採取し、専門機関で分析を行います。JIS A 1481規格群に基づいた分析により、アスベストの有無と種類、含有率を確定させます。
「建築物石綿含有建材調査者」「工作物石綿事前調査者」による調査の必要性
2023年(令和5年)10月からは、この事前調査を「建築物石綿含有建材調査者」という国家資格を持つ専門家が行うことが義務化されました。
以前は誰でも調査が可能でしたが、見落としや誤った判断による飛散事故を防ぐため、専門知識を持った有資格者による実施が必須となりました。したがって、調査を依頼する際は、業者がこの資格を保有しているか、あるいは有資格者と提携しているかを必ず確認する必要があります。
なお、建築物ではなく「工作物」(プラント設備、電気設備、配管、貯蔵設備など)の解体・改修工事を行う場合は、2026年(令和8年)1月1日以降、「工作物石綿事前調査者」という別の資格保有者による調査が義務化されました。
工作物石綿事前調査者は、建築物とは構造や石綿含有材料が異なる工作物に特化した専門知識を持つ資格者です。特にボイラー、煙突、反応槽、加熱炉、配管設備などの特定工作物においては、この資格保有者による調査が必須となります。
建築物か工作物かの判断が難しい場合もあるため、配管やボイラーなどの設備機器を含む解体・改修工事を計画する際は、調査を依頼する業者が「建築物石綿含有建材調査者」と「工作物石綿事前調査者」の両方、またはいずれか適切な資格を保有しているか確認することが重要です。
アスベスト保温材の適切な除去方法と工法比較
調査の結果、アスベスト保温材の使用が確定した場合、工事の内容に応じて適切な対策を講じる必要があります。対策には大きく分けて「除去」「封じ込め」「囲い込み」の3つの工法があります。
除去工法:完全に取り除く最も確実な方法
「除去工法」は、アスベストが含まれる保温材をすべて取り除き、非アスベストの新しい断熱材に交換する方法です。
メリット:
建物からアスベストが完全になくなるため、将来的な健康リスクや管理の手間、解体時のコスト負担が解消されます。資産価値の向上にもつながります。
デメリット:
工期が長く、費用が最も高額になります。また、作業中の飛散リスクが最も高いため、厳重な隔離養生が必要です。
封じ込め工法・囲い込み工法:メリットとデメリット
除去が困難な場合や、コストを抑えたい場合に選択される方法です。
- 封じ込め工法:
アスベスト保温材の表面に固化剤を吹き付け、繊維が飛散しないように固める方法です。
メリット: 工期が短く、費用が安い。
デメリット: アスベスト自体は残るため、定期的な点検が必要。将来解体する際には結局除去が必要になる。 - 囲い込み工法:
アスベスト保温材を板材などで覆い、密封する方法です。
メリット: 除去に比べて低コストで、作業中の飛散リスクが低い。
デメリット: 封じ込め同様、アスベストは残存するため、点検義務と将来的な除去コストが残る。
作業レベル2における飛散防止対策(グローブバッグ工法など)
レベル2である保温材の除去作業では、作業エリアをプラスチックシートで密閉し、負圧除じん装置を設置して内部の空気が外に漏れないようにする「隔離養生」が基本です。
ただし、配管の一部のみを除去する場合などは、「グローブバッグ工法」が採用されることもあります。これは、除去する配管部分を特殊な袋(グローブバッグ)で密閉し、袋の外から手袋越しに作業を行う方法です。大規模な隔離養生が不要なため、コストと工期を抑えられますが、適用できる範囲や条件には制限があります。
【費用相場】アスベスト保温材の除去にかかるコストと補助金

アスベスト対策を進める上で、最も気になるのが費用です。保温材の除去費用は、現場の状況によって大きく変動しますが、目安となる相場を知っておくことは重要です。
配管・ボイラー等の除去費用目安(単価・総額)
以下は、一般的なアスベスト保温材除去工事の費用目安です(調査費、仮設費、処分費を含む概算)。
| 対象箇所 | 単位 | 費用相場(目安) |
|---|---|---|
| 配管保温材(直管) | 1メートルあたり | 1.5万円 〜 3.5万円 |
| 配管エルボ・継手 | 1箇所あたり | 1万円 〜 2万円 |
| ボイラー本体 | 1基あたり | 30万円 〜 100万円以上 (大きさにより大きく変動) |
| ダクト断熱材 | 1平方メートルあたり | 2万円 〜 5万円 |
| 煙突用断熱材 | 1平方メートルあたり | 5万円 〜 10万円 |
※上記はあくまで目安であり、作業の難易度や廃棄物の量によって変動します。
見積もりが高くなるケース・安くなるケース
見積もり金額は、単なる「量」だけでなく、「作業のしやすさ」に大きく左右されます。
- 高くなるケース:
- 高所作業(足場の設置が必要)
- 狭所作業(人が入りにくい天井裏やピット内)
- 建物を使用しながらの工事(夜間作業や厳重な養生が必要)
- アスベストの種類が「クロシドライト(青石綿)」などの毒性が強いもの
- 安くなるケース:
- 建物全体の解体と同時に行う(養生や足場を共用できる)
- 作業スペースが広く、効率的に作業できる
- グローブバッグ工法など、簡易的な養生で対応可能な場合
アスベスト除去・調査に使える補助金制度と申請方法
国や地方自治体では、アスベストの調査や除去工事に対して補助金制度を設けている場合があります。
- アスベスト調査事業: 分析調査費用の一部を補助(上限25万円程度など)。
- アスベスト除去等事業: 除去工事費用の一部を補助(上限額は自治体により異なるが、数百万円規模の場合も)。
ただし、補助金の対象となるのは「吹き付けアスベスト」が中心で、保温材などの「成形板」や「レベル2建材」は対象外となるケースも少なくありません。また、申請は「工事契約前」に行う必要があるため、必ず事前に各自治体の窓口(建築指導課や環境課など)や、国土交通省のホームページで最新情報を確認してください。
信頼できるアスベスト調査・除去業者の選び方

アスベスト除去は、一歩間違えれば周囲に健康被害を撒き散らす危険な作業です。そのため、業者選びは「安さ」だけで決めてはいけません。信頼できるパートナーを見極めるポイントを紹介します。
必ず確認すべき「資格」と「許可」
まず、以下の資格や許可を持っているかを確認しましょう。
- 建築物石綿含有建材調査者、工作物石綿事前調査者: 事前調査を行うために必須の資格。
- 石綿作業主任者: 除去作業の現場指揮に必要な国家資格。
- 特別管理産業廃棄物収集運搬業許可: 除去したアスベスト(廃石綿等)を運搬するための許可。
これらの資格証の提示を求めた際に、スムーズに対応してくれる業者は信頼性が高いと言えます。
マニフェスト(産業廃棄物管理票)の適正処理と確認
除去されたアスベストは「特別管理産業廃棄物」として、厳格な管理の下で最終処分場まで運ばれなければなりません。このプロセスを記録するのが「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」です。
優良な業者は、マニフェスト(紙または電子)の写し(E票など)を工事完了後に必ず発注者に提出します。これにより、廃棄物が不法投棄されずに適正に処分されたことが証明されます。見積もりの段階で「マニフェストの写しはもらえますか?」と質問し、明確な回答が得られるか確認しましょう。
悪質業者を避けるためのチェックリスト
以下のような特徴がある業者は避けるべきです。
- 事前調査を行わずに「アスベストはない」と断定する。
- 見積もりが他社に比べて極端に安い(安全対策費を削っている可能性)。
- 「一式」という大雑把な見積もりで、内訳が不明瞭。
- 質問に対して「大丈夫です」「任せてください」と根拠のない回答をする。
- 契約を急かす。
アスベスト保温材に関するよくある質問(FAQ)

Q. 自宅の配管にアスベストが使われているか、自分で調べることはできますか?
A. 外観からある程度の推測は可能ですが、確実な判断は専門家による分析が必要です。特にアスベスト保温材は飛散しやすいため、ご自身でサンプルを採取したり、保温材を崩したりすることは大変危険ですので絶対におやめください。必ず専門業者に調査を依頼してください。
Q. アスベスト保温材の除去工事中、近隣への影響はありますか?
A. 適切な対策(隔離養生、負圧管理、セキュリティゾーンの設置など)を行えば、外部への飛散は防げます。しかし、対策が不十分な場合は飛散リスクがあります。そのため、工事前に業者が近隣住民への説明を行い、十分な安全対策を講じているかを確認することが重要です。
Q. 賃貸ビルのオーナーですが、テナント入居中に除去工事は可能ですか?
A. 可能ですが、非常に難易度が高くなります。作業エリアを完全に隔離し、夜間や休日に作業を行うなどの調整が必要です。また、空調を停止する必要がある場合もあります。テナント様への十分な説明と理解が不可欠ですので、経験豊富な業者と綿密な計画を立てる必要があります。
Q. アスベスト保温材をそのまま放置するとどうなりますか?
A. 劣化が進んでいない状態で、人が触れない場所にあれば直ちに危険というわけではありません。しかし、経年劣化で保温材が崩れたり、地震などの災害で破損したりすると、高濃度のアスベストが飛散する恐れがあります。また、法律により解体・改修時には必ず除去等の対応が必要になるため、計画的な対策をお勧めします。
まとめ:アスベスト保温材は正しく恐れ、専門家と共に安全な対処を

アスベスト保温材は、私たちの身近な建物に潜む「見えないリスク」です。レベル2という高い危険性を持ち、その取り扱いには高度な専門知識と技術、そして法律の遵守が求められます。
しかし、過度に恐れる必要はありません。適切な調査を行い、現状を把握し、信頼できる専門業者と協力して正しい手順で対処すれば、リスクは確実にコントロールできます。費用や手間に目が行きがちですが、何よりも優先すべきは、そこで働く人々や住む人々、そして近隣住民の健康と安全です。
もし、所有・管理する建物にアスベストの不安がある場合は、まずは有資格者のいる専門業者へ相談することから始めてください。その一歩が、将来の安心へとつながります。





