2023年に「大気汚染防止法」が全面的に施行されたことにより、すべての建築物の改修工事においてアスベストの事前調査が法的に義務付けられました。多くの家庭に設置されているエアコンの取付工事についても、その対象になります。この記事では、皆さんにも身近なエアコン取付・交換工事におけるアスベストの取り扱いについて解説します。
エアコン取付/交換工事のアスベスト対策手順
それでは早速、エアコンの取り付け/交換工事の際のアスベスト対策手順を説明していきます。
ステップ1:穴あけの必要があるか?
まず、穴あけの必要があるかどうかを判断します。既設の配管穴がありそれを利用できる場合は、アスベスト対策は不要で、従来通りのエアコン交換工事を行います。事前調査も不要です。
既設の穴が使えない場合や、穴を拡張する必要がある場合は次のステップに進みます。
ステップ2:建物の着工日が2006年9月以降か?
次に工事対象の建物の着工日を確認します。日本では2006年9月以降、石綿製品の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されていますので、それ以降であればアスベスト対策は不要です。
着工日を確認できる書類は以下のものです。
・検査済証
・設計図書
・契約書
・建物登記簿謄本
・建築確認通知書
・建築台帳記載事項証明書
・固定資産税課税台帳
・工事請負契約書
着工日が2006年8月以前、または着工日が確認できない場合は次のステップに進みます。
ステップ3:アスベスト調査分析の実施、みなし判定
アスベスト調査分析の実施
穴を開ける箇所の建材を採取し、アスベスト調査分析機関にて、アスベストの含有有無を調査します。分析の結果、アスベストが含有されていないことが確認できれば、アスベスト対策は不要で通常のエアコン工事を行います。
分析の結果、アスベストの含有が発覚した場合は、アスベスト対策工事を実施します。
アスベストの調査分析を実施するには、費用も時間も掛かります。現地で資格保有者が検体を採取し、検体をアスベスト分析機関に送付し、分析する必要があります。従来のエアコン取付/交換工事のように1度現場に行っただけでは完了せず、最短でも数日はかかるでしょう。そこで「みなし判定」が活用されることになります。
みなし判定について
みなし判定とは、アスベスト分析調査を行わずに建材にアスベストが含有していると”みなし”て、アスベスト対策工事を行うことを指します。
弊社はアスベスト調査事業のほか、エアコンの取付/交換工事の事業も行っており、その経験からいうと、着工日が確認できない場合は、みなし判定をしてアスベスト調査分析を行わずに工事を進めることが大多数になっています。みなし判定をすることで、エアコンの取付/交換工事の手間が1度で済むわけです。
ステップ4:アスベスト対策工事の実施
アスベストの含有が発覚または、みなし判定とした場合の、アスベスト対策工事を手順を概説します。
工事区画の分離
工事の際にアスベストが飛散するリスクがあるため、工事区画を区切ります。一般住宅のエアコン工事の場合ですと、工事対象の部屋の入口に立ち入り禁止の掲示板を掲げ、工事中に工事人以外が入れないようにします。下記リンクのようなものを利用します。
・アスベスト除去中立入禁止フロアサインスタンド
出展:モノタロウ
工事人のばく露防止とアスベストの飛散防止のために、HEPAフィルター付きの真空掃除機・集塵パッド、防塵マスク、タイベック防護服などの装備を使用して作業を行います。
・タイベックスーツ
出展:モノタロウ
作業後の廃棄物の収集
作業後、使用した道具を水スプレーなどで湿潤させて清掃し、アスベストを完全に除去します。穴あけで発生した廃棄物および、アスベストが付着した使い捨ての装備を廃棄袋にまとめます。廃棄袋はレベル3作業の場合、厚み0.1mm以上のプラスチック袋を2重に梱包して飛散しないようしっかりと縛ります。レベル1、2の場合は0.15mmの黄色の専用の袋を利用します。
・レベル1、2用のアスベスト排気用袋
出展:モノタロウ
アスベスト含有産業廃棄物の処理
収集された石綿含有廃棄物は特別管理産業廃棄物として、その他の廃棄物と区別して収集、運搬、積替え、保管をし、最終的に融解、無害化処理を行い、埋立処分します。
終わりに
本記事では、エアコン取付や交換工事におけるアスベスト対策について説明しました。
エアコン取り付けは新築時に行うことが多く、また古い建物においては既設エアコンの交換が多いため、実際にエアコン工事でアスベスト対策工事を行うことは少なく、弊社の場合だと全体のエアコン工事の5%程度になります。
アスベストは健康に深刻な影響を及ぼす可能性がありますので、その対策は非常に重要です。弊社は豊富な経験と知識を持ち、安全で確実な作業を提供します。もしエアコンの取付け工事やその他のアスベスト調査が必要な工事を検討されている場合は、アスベストバスターズにお気軽にお問い合わせください。一緒により安全な環境を作り上げましょう。